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百人一首90『見せばやな雄島の海人の袖だにもぬれぞぬれし色は変はらず』現代語訳と解説(本歌取り、句切れなど) |
著作名:
走るメロス
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百人一首(90)殷富門院大輔/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
見せばやな 雄島の海人の 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず
このテキストでは、百人一首に収録されている歌「見せばやな雄島の海人の袖だにもぬれぞぬれし色は変はらず」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(本歌取り、句切れ、係り結びなど)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、千載和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
※暗記に役立つ百人一首一覧
原文
見せばやな (※1)雄島の(※2)海人の 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず
ひらがなでの読み方
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
現代語訳
あなたにも(血の涙で濡れた私の袖を)見せたいものです。(松島の)雄島の漁師の袖でさえ波で濡れているのに、(私の袖のように)色までは変わりません。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代末期の女流歌人、殷富門院大輔(いんぷもんいん の たいふ)です。
私の袖が濡れて色が変わるのは、血の涙を流したため。会いに来ないそっけない恋人に私のつらさを知ってほしい。そのような内容の歌です。
■「血涙」について
血の涙とはおおげさな表現と思われるかもしれませんが、これは中国の書物韓非子の一節に由来するものです。
昔、卞和(べんか)という人物が山中で玉の原石を発見し、それを楚の厲王(蚡冒)に献上しました。ところが、それは玉ではなくただの石ころだと判断されたため、卞和は嘘つきの罪で、左足を切られる罰を受けました。
厲王が没した後、弟の武王が王位を継ぐと、卞和は再び同じ原石を献上しました。しかし、またしても玉は偽物とみなされ、卞和は、今度は右足を切られてしまいました。
卞和は、「自身が足を切られたことではなく、本物の宝石が石ころだと否定され、真実を語ったのに嘘つきと呼ばれたことが悲しい」と、石を抱えながら三日三晩血の涙を流して嘆きました。武王の後に即位した文王はその話を聞き、改めて玉を鑑定したところ、なんとそれは見事な宝石であることが判明したのです。文王はこれまでの非を認め、卞和を讃え、この宝石を「和氏の璧」と名付けて楚の国宝としました。
和氏の璧はのちに春秋戦国時代の趙に渡り、完璧という故事にも登場しています。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)雄島 | 宮城県松島湾にある島。現在は松尾芭蕉と河合曾良の句碑も建てられている。 |
(※2)海人 | ここでは「漁師」と訳す |
■本歌取り
この歌は、源重之が詠んだ
松島や 雄島の磯に あさりせし 海人の袖こそ かくは濡れしか
という歌をもとにしたものです。すでにある歌をオマージュに新しい歌を詠む技法を本歌取りといいます。
■句切れ
初句切れと四句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
見せ | サ行下二段活用「みす」の未然形 |
ばや | 終助詞 |
な | 終助詞 |
雄島 | ー |
の | 格助詞 |
海人 | ー |
の | 格助詞 |
袖 | ー |
だに | 副助詞 |
も | 係助詞 |
ぬれ | ラ行下二段活用「ぬる」の連用形 |
ぞ | 係助詞・係り結び |
ぬれ | ラ行下二段活用「ぬる」の連用形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形・係り結び |
色 | ー |
は | 係助詞 |
変はら | ラ行四段活用「かはる」の未然形 |
ず | 打消の助動詞「ず」の終止形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
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