デルフォイの信託は、古代ギリシャにおける最も有名な神託所であり、アポロン神の神託を伝える役割を果たしていました。この神託所は、ギリシャのデルフォイに位置していました。


デルフォイの信託は、ギリシャ神話において非常に重要な役割を果たしました。デルフォイはもともと「ピュートー」と呼ばれた聖域で、地母神ガイアに捧げられた場所でした。しかし、アポロンがこの地を征服し、彼の神託所として再建されました。デルフォイの神託所は、アポロン神が直接人々に予言を伝える場所とされ、その影響力は非常に大きかったといわれます。




デルフォイの神託は、ピューティアーと呼ばれる巫女（女性の祭司）によって伝えられました。彼女はアポロン神と直接交信すると信じられており、その予言は多くの政治家や戦争指導者にとって重要な指針となりました。ピュティアは、神殿内の三脚に座り、アポロンの神聖な木である月桂樹の葉を噛みながら予言を行いました。


デルフォイの神託を受けるためには、特定の儀式と手順が必要でした。まず、相談者はカスタリアの泉で身を清め、その後、神聖な泉カッソティスの水を飲みました。ピュティアも同様に身を清め、神殿内の地下室に入り、三脚に座って予言を行いました。予言は通常、デルフォイの月の7日目に行われ、アポロンの誕生日とされる日でした。


デルフォイの信託は、古代ギリシャにおいて非常に大きな影響力を持っていました。多くの都市国家や個人が、戦争や政治的決定を行う前にデルフォイの神託を求めました。例えば、スパルタの王レオニダスは、テルモピュライの戦いにおいてデルフォイの神託を受け、その結果として戦いに挑みました。また、アテネの指導者テミストクレスも、ペルシャ戦争においてデルフォイの神託を参考にしました。


デルフォイの神託は、ローマ帝国の支配下でも続きましたが、その影響力は次第に衰退しました。特に、ローマ皇帝テオドシウス1世が紀元後393年に異教の儀式を禁止したことで、デルフォイの神託は終焉を迎えました。最後の神託は、この時期に行われたとされています。

デルフォイの信託は、古代ギリシャにおける宗教的、政治的な中心地として非常に重要な役割を果たしました。アポロン神の神託を伝えるピュティアの予言は、多くの人々に影響を与え、古代社会における信仰と決定の重要な要素となりました。