|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
百人一首27『みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ』現代語訳と解説(掛詞・序詞など) |
著作名:
走るメロス
29,195 views |
百人一首(27)中納言兼輔/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ
このテキストでは、百人一首に収録されている歌「みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ」の現代語訳・口語訳と解説(掛詞・序詞・縁語・係り結びなど)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、新古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
※暗記に役立つ百人一首一覧
原文
(※1)みかの原 (※2)わきて流るる (※3)いづみ川 いつ見きとて(※4)か 恋しかるらむ
ひらがなでの読み方
みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
現代語訳
みかの原から湧き出し、(その原を)分けて流れるいづみ川ではないですが、その「いつみ」という名のように、(私はあの人を)いつ見たからといってこんなにも恋しいのでしょうか、まだ会ったこともないのに。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、三十六歌仙の一人中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ)です。紫式部の曽祖父にあたる人物です。
この時代の女性は、男性の前に顔を出すことがほとんどありません。人と会うときには、御簾越しに素顔を隠して会話をしていました。そのため男性は、周りの人から評判を聞いたり、和歌のやり取りを通して意中の女性のイメージを膨らませていたのです。
平安時代の恋愛事情について
噂でしか聞いたことがないけれど、あの女性はどんな人なのだろうか、気になるなぁ。そんな恋の始まりを詠んだ歌と言えるでしょう。
この歌の下の句の「いつ見き」には、「まだ会ったことがない」とするものと、「わずかではあるが会ったことがある(夜を共に過ごしたことがある)」とする2通りの解釈がありますが、ここでは前者を採用しています。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)みかの原 | 「瓶原」と書く。現在の京都府木津川。聖武天皇が740年に「恭仁京」を遷都した土地。都があったのは744年までのわずかな期間であったが、墾田永年私財法が発布された都としても知られる。 |
(※2)いづみ川 | 三重県伊賀市から京都府木津川市に流れる木津川のこと。 |
■(※1)、 (※3)歌枕
「みかの原」と「いづみ川(泉川)」は歌枕。歌に詠み込まれている名所のことを歌枕という。以下に例を記す。
【逢坂の関】
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
【生駒山】
君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
■(※2)掛詞・縁語
「わきて」は「湧きて」(水が湧く)と「分きて」(分けて)の掛詞で「いづみ」の縁語。
※「掛詞」とは、ひとつの言葉に2つ以上の意味を重ねて表現内容を豊かにする技法のこと。
※「縁語(えんご)」とは、和歌の修辞技法のひとつ。ひとつの和歌にある言葉と、意味や音声の上で関連のある言葉を用いて表現に幅をもたせる技法。
■(※4)係り結び
(※4)か恋しかるらむ | 「か」(疑問の係助詞)⇒「らむ」(現在推量の助動詞「らむ」の連体形)が係り結び。 |
■序詞
上の句「みかの原わきて流るる」が、「いつ見」を導く序詞。
■句切れ
なし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
みかの原 | ー |
わき | カ行四段活用「わく」の連用形 |
て | 接続助詞 |
流るる | ラ行下二段活用「ながる」の連体形 |
いづみ川 | ー |
いつ | 代名詞 |
見 | マ行上一段「みる」の連用形 |
き | 過去の助動詞「き」の終止形 |
と | 格助詞 |
て | 接続助詞 |
か | 疑問の係助詞。係り結び |
恋しかる | シク活用の形容詞「こひし」の連体形 |
らむ | 現在推量の助動詞「らむ」の連体形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
百人一首53『嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る』現代語訳と解説(反語など)
>
古今著聞集『能は歌詠み』のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説
>
源氏物語 桐壺 その21 源氏、左大臣家の娘(葵上)と結婚
>
百人一首4『田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ』現代語訳と解説(枕詞・品詞分解)
>
伊勢物語『忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとは』わかりやすい現代語訳・解説と品詞分解
>
デイリーランキング