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18_80 ヨーロッパの拡大と大西洋世界 / 宗教改革

長老主義とは わかりやすい世界史用語2577

著者名: ピアソラ
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長老主義とは
長老主義という言葉は、単に特定のキリスト教教派を指すだけでなく、教会がどのように組織され、統治されるべきかについての、一つの明確な思想体系を表現しています。その名は、ギリシャ語で「長老」を意味する「プレステュロス」に由来し、その核心には、教会の権威が、個人のカリスマや聖職者の階層ではなく、信徒の中から選ばれた長老たちによる会議的な治政治にあるという信念が存在します。この制度は、教会の頭は唯一イエス=キリストであり、地上におけるその統治は、聖書の教えに従って、牧師と信徒の代表が共同で担うべきだという神学的な確信から生まれています。 長老主義は、教会の統治形態(政体)として、大きく分けて三つの主要なモデルの一つと見なされます。一つは、教皇や主教(司教)が上から下へと権威を行使する階層的な「監督制」です。もう一つは、各個教会が完全に自律し、外部の権威に従わない「会衆制」です。長老主義は、これら二つの中間に位置し、各個教会の自主性を尊重しつつも、より広範な教会との有機的なつながりと、共通の信仰告白に基づく一致を重視する、代議制的な共和制とも言うべき構造を持っています。 この統治形態は、単なる組織論ではありません。それは、神の主権、聖書の権威、そして全信徒祭司といった、宗教改革の根本的な神学的洞察に深く根ざしています。16世紀のジャン=カルヴァンのジュネーヴにおける教会改革にその原型を見出し、スコットランドのジョン=ノックスによって国家的な規模で確立され、清教徒革命のるつぼの中でウェストミンスター信仰告白として体系化されました。その後、世界中に広がり、特に英語圏のプロテスタント世界において、神学的にも、文化的にも、そして政治的にも、大きな影響を与え続けてきました。長老主義を理解することは、宗教改革が目指した教会像の一つの具体的な帰結を探り、信仰がどのように共同体を形成し、統治するのかという、普遍的な問いに光を当てることに他なりません。



長老主義の聖書的=神学的基礎
長老主義の教会統治形態は、人間の知恵や都合によって考案されたものではなく、聖書、特に新約聖書に示されている使徒時代の教会のモデルに基づいていると、その支持者たちは主張します。彼らにとっては、長老による会議的な統治は、聖書が命じる教会のあるべき姿なのです。

新約聖書における「長老」
新約聖書、特に使徒言行録やパウロ書簡を注意深く読むと、「長老」という職務が、初代教会において中心的な役割を果たしていたことが明らかになります。使徒言行録では、パウロとバルナバが、第一次伝道旅行で設立した諸教会に、「長老たちを任命した」と記されています。これは、教会が設立されるとすぐに、その指導と監督のために、複数の指導者が立てられたことを示唆しています。単一の指導者ではなく、複数の長老による集団指導体制が、当初からのパターンであったように見えます。 さらに、パウロがテトスに宛てた手紙では、「あなたが、私が命じておいたように、クレタの町々に長老たちを任命するため」に、彼をクレタに残したと述べられています。ここでも、一つの町(教会)に複数の長老が立てられるという原則が確認できます。 興味深いことに、新約聖書では、「長老」と「監督」という言葉が、しばしば同じ人物や職務を指して、区別なく用いられています。例えば、使徒言行録第20章で、パウロはエペソの教会の「長老たち」を呼び寄せ、彼らに向かって、「あなたがたは自分自身と群れの全体とに気を配りなさい。聖霊があなたがたをその群れの監督者にお立てになったのです」と語りかけます。ここでは、同じ人々が「長老」であり、「監督」であると明確に述べられています。同様に、テトスへの手紙第1章でも、長老の資格について述べた直後に、「監督は、神の家の管理者として…」と、同じ職務を指して言葉が切り替えられています。 このことから、長老主義者たちは、聖書には、今日の監督制教会に見られるような、一般の聖職者(司祭や長老)の上に立つ、特別な権威を持つ「主教(監督)」という階級は存在しないと結論付けます。新約聖書における「監督」とは、単に長老の機能、すなわち群れを「監督する」働きを説明する言葉であり、職務としては「長老」と同一であった、と彼らは主張します。すべての長老は監督であり、すべての監督は長老なのです。

教会の頭=キリストと全信徒祭司
長老主義の統治形態の根底には、より深い神学的な原理が存在します。その第一は、「教会の唯一の王であり、頭はイエス=キリストである」という、宗教改革の中心的な確信です。キリストは、天に昇られた後も、聖霊と御言葉を通して、ご自身の教会を統治し続けています。したがって、地上において、いかなる個人(教皇や主教)も、あるいは、いかなる組織(国家)も、キリストに代わって教会の頭として君臨することは許されません。 このキリストの主権は、教会に与えられた権威が、本質的に「奉仕的」かつ「宣言的」なものであることを意味します。教会の指導者たちは、自分自身の権威で語るのではなく、あくまでキリストの言葉である聖書に仕え、その教えを忠実に宣言し、適用する権威しか持っていません。彼らの権威は、聖書に従っている限りにおいてのみ、正当なものとなります。 第二の重要な神学的な原理は、「全信徒祭司」の教えです。マルティン=ルターによって強調されたこの教えは、すべての信者が、キリストの十字架の故に、祭司を介することなく、直接神の御前に出ることができるというものです。これは、聖職者と平信徒の間に、本質的な身分の違いを設ける、中世カトリック教会の階層構造を根本から覆すものでした。 長老主義は、この全信徒祭司の原理を、教会の統治に適用します。すべての信者は、霊的な賜物と責任を与えられており、教会の統治に参加する権利と義務を持っています。しかし、教会全体が直接集まってすべての事柄を決定することは、現実的ではありません。そこで、会衆は、自分たちの中から、霊的な賜物と知恵、そして人格において優れた人々を、自分たちの代表として選び、彼らに統治の務めを委ねます。これが「長老」です。 このようにして選ばれた長老は、二種類に分けられます。一つは、「教える長老」であり、一般に「牧師」と呼ばれます。彼らは、神学的な訓練を受け、特に御言葉を教え、説教し、サクラメントを執行する務めに専念します。もう一つは、「治める長老」であり、信徒の中から選ばれます。彼らは、牧師と共に、教会の霊的な監督、規律の維持、そして信徒の牧会的な配慮といった、統治の務めを担います。 重要なのは、この二種類の長老が、職務の機能においては違いがあるものの、統治における権威においては、対等であるということです。牧師は、信徒長老よりも偉いわけではなく、信徒長老も、牧師の単なる補助役ではありません。両者は、キリストから与えられた権威を、共同で、会議体(セッション)において行使するのです。この構造は、聖職者による支配を防ぎ、全信徒祭司の原理を具現化するための、巧みな仕組みと言えます。

長老主義の統治構造=会議の連結
長老主義の最も際立った特徴は、その代議制的な会議構造にあります。教会は、個々の信徒から、地域、国家、そして国際的なレベルへと、一連の会議体によって連結されています。それぞれの会議は、より下位の会議に対する監督権を持ち、教会の教義的な純潔と、統治における秩序を維持する責任を負います。この構造は、しばしば、地方自治体、州議会、連邦議会といった、近代的な共和制の政治システムと比較されます。

セッション(小会)=個教会レベル
長老主義の統治の最も基本的な単位は、個々の教会を治める「セッション」、あるいは「コンシストリー」と呼ばれる会議です。日本語では「小会」と訳されます。セッションは、その教会の牧師(教える長老)と、会衆によって選挙で選ばれた信徒長老(治める長老)たちによって構成されます。 セッションは、その教会の霊的な生活全般に対する責任を負います。その主な務めは、以下の通りです。 礼拝の監督:説教の内容が聖書的であるか、サクラメントが正しく執行されているかなど、教会の公的な礼拝が、神の御心にかなった、秩序ある形で行われるように監督します。 教会員の受け入れと除名:信仰を告白し、教会員になりたいと願う人々を審査し、受け入れます。また、教会の規律を乱し、悔い改めない教会員に対しては、聖餐停止や除名といった、霊的な懲戒を行います。 信徒の牧会:教会員一人ひとりの霊的な状態に気を配り、訪問し、祈り、カウンセリングを提供します。 教育プログラムの監督:日曜学校や、その他の教育プログラムが、教会の信仰告白に沿った、健全な内容であるかを監督します。 教会の代表:より上位の会議である中会に、代表者(牧師と信徒長老)を派遣します。 セッションの議長は、通常、その教会の牧師が務めます。すべての決定は、祈りのうちに、議論を尽くし、多数決によってなされます。一人の牧師が独裁的に教会を支配したり、あるいは会衆全体の意見が直接的にすべての決定を左右したりすることを防ぎ、知恵と経験を持つ代表者たちによる、熟慮に基づいた統治を目指すのが、セッションの役割です。

プレズビテリー(中会)=地域レベル
複数の個教会は、地理的に定められた地域ごとに、一つの「プレズビテリー」、すなわち「中会」を形成します。中会は、その地域に属するすべての教会の牧師(教える長老)と、各教会のセッションから派遣された同数の信徒長老(治める長老)によって構成されます。 中会は、個々の教会(セッション)を監督し、地域全体の教会の福祉に責任を負う、長老主義システムの中核的な会議体です。その権限は、セッションよりも広範に及びます。 牧師の資格審査と任職:牧師候補生の神学教育を監督し、最終的な資格試験を行い、牧師として任職(按手)する権限を持ちます。牧師は、個教会ではなく、中会に所属します。 牧師と教会の関係の監督:ある教会が新しい牧師を招聘する際に、その手続きを監督し、承認します。また、牧師と教会の間に問題が生じた場合には、それを調停し、場合によっては、その関係を解消する権限も持ちます。 新しい教会の設立:地域内に新しい教会(伝道所)を設立し、それを監督し、やがて正式な教会として組織することを承認します。 教義的な問題の判断:地域内の教会で生じた、教義上の論争や、規律上の困難な問題について、最終的な判断を下します。 上位の会議への上訴の受理:セッションの決定に不服のある教会員は、中会に上訴することができます。中会は、その上訴を審議し、セッションの決定を支持するか、覆すかを決定します。 中会は、定期的に(例えば、年に数回)開催され、地域全体の教会の課題について協議します。この中会というレベルが存在することにより、長老主義の教会は、会衆制のように孤立することなく、互いに支え合い、監督し合う、有機的な共同体を形成することができるのです。

シノッド(大会)と総会=国家・国際レベル
複数のプレズビテリー(中会)は、より広範な地域(例えば、州や地方)ごとに、「シノッド」、すなわち「大会」を形成します。大会は、その地域に属する各中会から派遣された、牧師と信徒長老の代表者によって構成されます。大会の役割は、教派によって異なりますが、一般的には、複数の中会にまたがる問題を協議し、中会の働きを監督し、中会からの上訴を審理する役割を担います。いくつかの小さな長老派教会では、大会が最高会議体となる場合もあります。 そして、ほとんどの長老派教会における最高会議体が、「ジェネラル=アッセンブリー」、すなわち「総会」です。総会は、通常、年に一度開催され、その教派に属するすべての中会から選ばれた、同数の牧師と信徒長老の代表者によって構成されます。 総会は、その教派全体の信仰、秩序、そして使命に関する、最終的な権威を持ちます。 信仰告白の維持と改訂:教会の憲法の一部である、ウェストミンスター信仰告白などの教義基準を、維持し、解釈する責任を負います。その改訂には、総会の承認と、全中会の過半数(しばしば3分の2や4分の3)の賛成が必要とされる、厳格な手続きが定められています。 教会全体の規律の監督:教会の統治規定を制定し、改訂します。また、下位の会議(大会や中会)からの上訴や、教義に関する論争について、最終的な判決を下します。 教会全体の使命の推進:国内外の伝道、神学校の運営、出版事業、社会への働きかけといった、教派全体のプログラムや機関を設立し、監督します。 他の教派との関係:他のキリスト教教派や、国際的な教会組織との、エキュメニカルな関係を維持、発展させます。 総会の決定は、その教派に属するすべての教会と教会員を拘束します。しかし、その権威もまた、絶対的なものではなく、聖書と教会の憲法(信仰告白と統治規定)に従う限りにおいてのみ、正当なものとされます。この会議の連結システムは、個人の独裁を防ぎ、教会全体の一致を保ち、聖書の権威の下で、秩序ある自由を確保するための、精緻な仕組みなのです。

長老主義の歴史的展開
長老主義の統治形態は、16世紀の宗教改革、特にジャン=カルヴァンの思想と実践に、その直接的な起源を持ちます。しかし、それが一つの明確な教会制度として確立され、国家的な規模で展開されたのは、宗教改革の第二世代、特にスコットランドにおけるジョン=ノックスの働きを通じてでした。

起源=ジャン=カルヴァンとジュネーヴ
1541年、ジュネーヴに帰還したジャン=カルヴァンは、市参事会の要請を受けて、『教会規定』を起草しました。これは、ジュネーヴの教会を、聖書のモデルに基づいて再組織するための、包括的な計画でした。この規定の中で、カルヴァンは、教会を指導するための四つの職務=牧師、教師、長老、執事を定めました。 特に重要なのが、「長老」の職務です。長老は、市参事会のメンバーの中から選ばれた12名の信徒であり、牧師たちと共に、コンシストリー(教会会議)を構成しました。コンシストリーは、市民の信仰と道徳を監督し、教会の規律を維持する責任を負っていました。これは、牧師(教える長老)と信徒の代表(治める長老)が、共同で教会を統治するという、長老主義の原型となるモデルでした。 しかし、カルヴァンのジュネーヴの制度は、完全な長老主義とは言えませんでした。長老は、会衆によってではなく、市参事会によって選ばれており、教会と国家の関係は、まだ十分に分離されていませんでした。また、ジュネーヴは一つの都市国家であり、中会や総会といった、より広範な会議の連結システムは、まだ存在しませんでした。カルヴァンのモデルは、後の長老主義が発展するための、重要な種子を蒔いた、と言うことができます。

確立=ジョン=ノックスとスコットランド
ジュネーヴでカルヴァンの薫陶を受けたジョン=ノックスは、1559年に故国スコットランドに帰還し、宗教改革の指導者となりました。彼は、スコットランドを、カトリックの支配から解放し、プロテスタントの信仰、特にカルヴァン主義の神学に基づいた、国民的な教会を設立することを目指しました。 1660年、ノックスと彼の仲間たちは、『第一規律書』を起草し、スコットランド議会に提出しました。これは、スコットランド教会を、長老主義の原則に基づいて組織するための、壮大な青写真でした。この計画は、各個教会に、会衆によって選ばれた長老と執事を置くことを定めました。また、地域ごとの教会の監督と、牧師の訓練のために、10の地区に「監督官」を置くという、一時的な措置も含まれていました。 その後、1578年にアンドリュー=メルヴィルらの指導のもとで起草された『第二規律書』によって、スコットランドの長老主義は、より純粋で徹底した形へと発展します。この文書は、キリストが教会の唯一の頭であることを高らかに宣言し、国家の権力が教会の霊的な事柄に介入することを、厳しく退けました(「二王国論」)。そして、教会の統治を、個教会のカーク=セッション、地域ごとのプレズビテリー、地方ごとのプロヴィンシャル=シノッド、そして全国的なジェネラル=アッセンブリーという、四段階の会議体によって行う、完全な長老主義システムを確立しました。 しかし、この長老主義の確立は、平坦な道のりではありませんでした。ジェームズ6世(後のイングランド王ジェームズ1世)をはじめとするスチュアート朝の王たちは、王権神授説に基づき、王が任命する主教によって教会を統治する、監督制をスコットランドに強制しようとしました。これに対し、長老主義を支持する人々(カヴェナンター)は、神との契約に基づき、キリストの王権と教会の自由を守るために、時には武力をもって抵抗しました。この、長老主義と監督制の間の、1世紀以上にわたる激しい闘争は、スコットランドの国民的アイデンティティの形成に、決定的な影響を与えました。

体系化=ウェストミンスター会議と信仰告白
17世紀半ば、イングランドで、チャールズ1世の専制と、ウィリアム=ロード大主教による監督制強化の試みに対する不満が高まり、清教徒革命(イングランド内戦)が勃発しました。議会派は、王党派に対抗するために、スコットランドの長老派と同盟を結びました(厳粛同盟規約、1643年)。その見返りとして、議会は、イングランド国教会を、長老主義の原則に基づいて改革することを約束しました。 この目的のために、1643年、イングランド議会は、ウェストミンスター寺院に、神学者と議員からなる会議を召集しました。これが、ウェストミンスター会議です。この会議には、イングランドの神学者だけでなく、スコットランドからの代表も参加し、5年以上にわたって、教会の教義、礼拝、統治に関する、包括的な基準文書を作成しました。 この会議が生み出した文書群は、「ウェストミンスター基準」として知られ、その後の長老主義の歴史において、最も権威ある基準となりました。 ウェストミンスター信仰告白:カルヴァン主義の神学を、体系的かつ精密に表現した、長老主義の最も重要な教義基準。 大教理問答・小教理問答:信仰告白の内容を、問答形式で、教育用にまとめたもの。 教会統治形態:長老主義の教会政治の原則と構造を詳細に規定したもの。 公同礼拝指針:礼拝の形式について、聖書的な原則を示したもの。 ウェストミンスター会議は、イングランド国教会を長老派教会として改革するという、当初の目的を達成することはできませんでした。王政復古によって、イングランドでは監督制が復活したからです。しかし、会議が生み出した文書群は、スコットランド教会によって公式に採択され、また、アメリカをはじめとする世界中の長老派教会にとって、最も重要な憲法的な文書となりました。これにより、長老主義は、スコットランドの国民的教会制度から、明確な神学的・教会法的な体系を持つ、国際的な運動へと発展する基礎を築いたのです。
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『世界史B 用語集』 山川出版社

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