『歴史』《トゥキディデス》とは
トゥキディデスの『歴史』《トゥキディデス》(The History of the Peloponnesian War)は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスによって書かれた、歴史学における重要な作品です。
『ペロポネソス戦争史』の概要
『ペロポネソス戦争史』は、紀元前431年から紀元前404年にかけてのアテナイとスパルタの間の戦争を詳細に記録しています。この作品は、戦争の原因、経過、結果についての貴重な情報を提供しており、歴史学の基礎を築きました。
執筆の動機と方法
トゥキディデスは、ペロポネソス戦争がギリシャ世界を揺るがす大戦に発展すると考え、その記録を残すことを決意しました。彼は目撃者の証言や自身の観察を基に、できる限り正確な情報を提供しようと努めました。彼の目的は、人間の行動や出来事が時間とともに忘れ去られることを防ぎ、重要な業績を後世に伝えることでした。
内容の構成
『ペロポネソス戦争史』は、8つの書に分かれており、それぞれが戦争の異なる時期や側面を扱っています。各書は以下のような内容を含んでいます:
第一巻:ペロポネソス戦争の背景と紀元前432年までの出来事。
第二巻:紀元前431年から紀元前429年までの戦争の経過。
第三巻:紀元前428年から紀元前425年までの出来事。
第四巻:紀元前425年から紀元前423年までの戦争の進展。
第五巻:紀元前422年から紀元前416年までの出来事。
第六巻:紀元前416年から紀元前414年までの戦争の詳細。
第七巻:紀元前414年から紀元前413年までの戦争の進行。
第八巻:紀元前413年から紀元前411年までの出来事。
重要なエピソード
『ペロポネソス戦争史』には、多くの重要なエピソードが含まれています。例えば、アテナイの将軍ペリクレスの葬送演説や、ミロス島の対話などは、当時のギリシャ社会や政治観を理解する上で重要です。また、戦争の詳細な記述は、戦争の原因や経過、結果についての貴重な情報を提供しています。
トゥキディデスの影響
トゥキディデスの業績は、古代ローマの歴史家キケロによって「歴史の父」と称されるほど、後世に大きな影響を与えました。彼の著作は、中世ヨーロッパの学者たちによっても広く読まれ、歴史学の発展に寄与しました。
また、彼の記述は、現代の考古学や歴史学の研究においても重要な資料となっています。彼の報告の多くは、後の研究によって確認されており、彼の業績の信頼性が証明されています。
トゥキディデスの哲学
トゥキディデスは、歴史を記録する際に神々の介入を排除し、人間の行動や出来事を自然な原因と結果の連鎖として捉えました。彼は、戦争や政治の背後にある人間の本性や動機を探求し、これを基に歴史を解釈しました。このアプローチは、後に「政治的リアリズム」として知られるようになり、国際関係論の基礎を築きました。
トゥキディデスの『ペロポネソス戦争史』は、歴史を科学的に記録する方法を確立し、その業績は歴史学において重要な位置を占めています。