ローリンソンとは
ヘンリー・クレズウィック・ローリンソン(1810年-1895年)は、イギリスの軍人であり、オリエンタリストとしても知られています。彼は、ペルシャのベヒストゥーン碑文の解読において重要な役割を果たしました。この碑文は、古代ペルシャ語、エラム語、バビロニア語の三言語で書かれており、楔形文字の解読においてロゼッタ・ストーンと同様の役割を果たしました。
ローリンソンの生涯と背景
ローリンソンは1810年にイギリスで生まれ、若い頃から軍人としてのキャリアを積みました。彼は東インド会社の軍隊に所属し、ペルシャでの任務に就くことになりました。この時期に、彼は古代の言語と文化に強い興味を持つようになり、特に楔形文字の解読に情熱を注ぎました。
ベヒストゥーン碑文の発見と解読
ベヒストゥーン碑文は、イランのケルマンシャー州にあるベヒストゥーン山の崖に刻まれた巨大な碑文で、ダレイオス1世(紀元前522年〜486年)の命令によって作成されました。この碑文は、ダレイオス1世の即位と反乱の鎮圧について記録しており、古代ペルシャ語、エラム語、バビロニア語の三言語で書かれています。
ローリンソンは1835年に初めてベヒストゥーン碑文を訪れ、その内容を詳細に記録しました。彼は崖の上に登り、碑文の文字を写し取るという危険な作業を行いました。その後、彼は1843年にも再び訪れ、さらに詳細な記録を行いました。
楔形文字の解読
ローリンソンの最大の功績は、古代ペルシャ語の楔形文字の解読に成功したことです。彼は、ベヒストゥーン碑文の三言語のうち、まず古代ペルシャ語の部分を解読しました。この解読により、エラム語とバビロニア語の部分も解読する手がかりが得られました。ローリンソンの解読作業は、楔形文字全体の理解を大きく進展させ、メソポタミアの歴史や文化の研究に大きな貢献をしました。
ローリンソンの業績と影響
ローリンソンの業績は、彼の著作「ペルシャ楔形文字碑文」にまとめられています。この著作は、1846年から1851年にかけて出版され、碑文の完全な翻訳、文法の分析、注釈が含まれています。この業績により、古代ペルシャの歴史やその支配者についての貴重な情報が得られました。
ローリンソンの解読作業は、他の学者たちにも大きな影響を与えました。彼の解読に基づいて、エラム語やバビロニア語の楔形文字も解読され、メソポタミアの古代文明の理解が飛躍的に進みました。ローリンソンは、その後も多くの考古学的研究に携わり、オリエント学の発展に寄与しました。