びんなし/便なし
このテキストでは、ク活用の形容詞「
びんなし/便なし」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
形容詞・ク活用
未然形 | びんなく | びんなから |
連用形 | びんなく | びんなかり |
終止形 | びんなし | ◯ |
連体形 | びんなき | びんなかる |
已然形 | びんなけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | びんなかれ |
■意味1
都合が悪い、具合が悪い、不便だ。
[出典]:
道長の豪胆 大鏡
「よその君達は、
便なきことをも奏してけるかなと思ふ。」
[訳]:(命じられた道長以外の)他の君達は、(入道殿は)
都合の悪いことを申し上げなさったなと思います。
■意味2
感心しない、不当だ、不都合である。
[出典]:時平 大鏡
「左の大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて参れる、びんなきことなり。」
[訳]:左大臣が、(官位が)一位にあるといいながら、美しさが格別な装いで参内していることは、感心しないことだ。
■意味3
気の毒である、かわいそうだ。
[出典]:落柿舎の記 風俗文選
「...と侘ぶ。いと便なければ、ゆるしやりぬ。」
[訳]:...とどうにも困って頼んでいる。とても気の毒なので、聞き入れてやった。