農業の発展
平和な時代に入り、1643年(寛永20年)前後に起こった大飢饉以後、領主は農業を勧める勧農を行い、農業生産の基盤を作りました。いままで開発してこなかった干潟などを埋め立て、用水路を導入し、水の届かない地域など様々な場所で水田が広げられました。17世紀に起こったこうした動きを、「
大開発時代」といい、江戸時代初期の164万町歩から、297万町歩へと田畑面積が急拡大しました。
農地の拡大とともに、収穫量もあがり、農業技術も進歩しました。深耕具の
備中鍬、脱穀具の
千歯扱き、選別用の
唐箕・千石どおし、揚水具の
踏車などが普及していきました。元禄時代以降には、肥料も刈敷や人糞に加え、油粕や干鰯などお金で買う
金肥が綿やたばこなどの商品作物に用いられるようになりました。この時代に書かれた重要な農書が宮崎安貞の『
農業全書』で、近世の『清良記』にくらべ格段に内容が進歩しました。
商品作物としては、
桑・麻・木綿・油菜・藍・紅花・たばこ・茶・野菜が作られるようになり、各地に特産物が生まれ、
農村家内工業がその担い手でした。
以下に、各地の特産物をまとめます。
絹織物…西陣織・桐生絹・伊勢崎絹・足利絹・丹後縮緬・上田紬 |
木綿…小倉織・久留米絣・有松絞・尾張木綿・河内木綿 |
麻…奈良晒・越後縮・近江麻・薩摩上布 |
陶磁器…有田焼・京焼・九谷焼・瀬戸焼・備前焼 |
漆器…南部塗・会津塗・輪島塗・春慶塗 |
製紙…美濃・土佐・駿河・石見・伊予 |
製紙(高級)…鳥ノ子紙・奉書紙・美濃紙・杉原紙 |
酒…伏見・灘・伊丹・池田 |
醤油…野田・銚子・京都・竜野 |
諸産業の発達
漁業では上総九十九里浜の
地引網の鰯漁、備前五島の鮪漁、土佐の鰹漁、土佐・紀伊・備前・長門などの鯨漁が盛んになりました。蝦夷地では、なまこ・干し鮑・フカヒレをつめた
俵物が生産されるようになりました。漁業は入会漁業を行う地域が多くありました。
塩業では、播磨の赤穂などで
入浜式塩田が作られました。
林業では
木曽檜や
秋田杉などが有名でした。
鉱山業は、土佐の金山・石見の銀山・但馬生野の銀山・出羽院内の銀山が有名でした。これ以外に銅山も開発が進み、下野の
足尾銅山・伊予の
別子銅山・出羽の
阿仁銅山も開発されました。鉄は
たたら精錬という新たな技術で玉鋼が作られました。