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平家物語原文全集「徳大寺厳島詣 3」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

徳大寺厳島詣

内侍共、

「これまでのぼる程では、我等が主の太政大臣入道殿へいかで参らであるべき。」


とて、西八条殿へぞ参じたる。入道相国急ぎ出あひ給ひて、

「いかに内侍共は、何事の列参ぞ。」


「徳大寺殿の御参り候ふて、七日こもらせ給ひて、御のぼりさぶらふを、一日路送り参らせて候へば、

「さりとてはあまりに名残惜しきに、今一日路。」

「二日路。」

と仰せられて、これまで召し具せられて候ふ。」


「徳大寺は、何事の祈誓に厳島までは参られたりけるやらむ。」


とのたまへば、

「大将を御祈のためとこそ仰せられさぶらひしか。」


その時入道うちうなづいて、

「あないとをし。王城にさしもたつとき霊仏、霊社のいくらもましますを差し置いて、我が崇め奉る御神へ参つて、祈申されけるこそありがたけれ。これほど心ざし切ならむ上は。」


とて、嫡子小松殿、内大臣の左大将にてましましけるを辞せさせ奉り、次男宗盛大納言の右大将にておはしけるを超えさせて、徳大寺を左大将にぞなされける。あはれめでたかりけるはかりことかな。新大納言もかやうにかしこきはからひをばし給はで、由なき謀反起こひて、我が身亡び、子息所従に至るまで、かかる憂き目を見せ給ふこそたてけれ。

つづき
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・平家物語原文全集「徳大寺厳島詣 3」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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