『鼓腹撃壌』
ここでは、
十八史略に収録されている「
鼓腹撃壌」の原文(白文)、書き下し文、現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。この箇所は「史記」の「五帝」章の「帝尭陶唐氏」から抜粋して十八史略に収録されたものです。
※書籍によって内容が異なる場合があります。
※この故事は、「平和で幸せな世の中を楽しむさま」を意味する
鼓腹撃壌の由来になったものです。
白文(原文)
帝尭陶唐氏、帝嚳子也。
其仁如天、其知如神。
就之如日、望之如雲。
都平陽。
茆茨不剪、土階三等。
治天下五十年、不知天下治(※ⅰ)歟、不知歟、億兆願戴己歟、不願戴己歟。
問左右不知、問外朝不知、問在野不知、乃微服游(※ⅱ)於康衢。
聞童謡曰、
「立我烝民、(※ⅲ)莫匪爾極。
不識不知、順帝之則。」
有老人、含哺鼓腹、撃壌而歌曰、
「日出(※ⅳ)而作、日入而息。
鑿井而飲、耕田食。
帝力(※ⅴ)何有於我哉。」
書き下し文
帝尭
(※1)陶唐氏、帝
(※2)嚳子也。
帝尭陶唐氏(ていぎょうとうとうし)は、帝嚳(ていこく)の子なり。
其仁如天、其知如神。
其の仁は天の如く、其の知は神の如し。
(※3)就之如日、望之如雲。
之に就けば日の如く、之を望めば雲の如し。
都平陽。
平陽に都す。
(※4)茆茨不剪、土階三等。
茆茨(ぼうし)剪(き)らず、土階三等のみ。
治天下五十年、不知天下治歟、不知歟、
(※5)億兆願戴己歟、不願戴己歟。
天下を治むること五十年、天下治まるか、治まらざるか、億兆己を戴(いただ)くを願ふか、己を戴くを願はざるかを知らず。
問
(※6)左右不知、問
(※7)外朝不知、問
(※8)在野不知、
(※9)乃(※10)微服(※11)游於
(※12)康衢。
左右に問ふに知らず、外朝に問ふに知らず、在野に問ふに、知らず、乃ち微服して康衢(こうく)に游ぶ。
聞童謡曰、
童謡を聞くに曰はく、
「立我(※13)烝民、莫匪爾(※14)極。
「我が烝民(じょうみん)を立つるは、爾(なんじ)の極(きょく)に匪(あら)ざる莫(な)し。
不識不知、順帝之(※15)則。
識(し)らず知らず、帝の則(のり)に順(したが)ふ。」と。
有老人、
(※16)含哺鼓腹、
(※17)撃壌而歌曰、
老人有り、哺(ほ)を含み腹を鼓(こ)し、壌(つち)を撃ちて歌ひて曰はく、
「日出而作、日入而息。
「日出でて作(な)し、日入りて息(いこ)ふ。
(※18)鑿井而飲、耕田食。
井(せい)を鑿(うが)ちて飲み、田を耕して食らふ。
帝力何有於我哉。
帝力何ぞ我に有らんや。」と。
■次ページ:口語訳(現代語訳)