プロレタリア文学とは
プロレタリア文学とは、1920年代から1930年代にかけて誕生した文学で、
社会主義・
共産主義への転向を目指す、革命的立場から描いた文学のことを指します。
この文学は日本だけでなく、世界各国でも展開されました。特にロシアでは、1917年のロシア革命の成功とそれに続くコミンテルンの結成以後、プロレタリア文学が急速に広がりました。ゴーリキーやショーロホフなどが代表的な作家です。
アメリカでは、1929年の大恐慌以後、社会問題が大きな関心事となり、プロレタリア文学が盛んになりました。オーデンやオーウェルなどがスペイン内戦に参加し、反ファシズムの立場を明確にしました。
イギリスでは、1930年代に新しい傾向を持つ若い作家たちが現れました。デー・ルイスやオーデンなどが左翼的な詩を書きました。
フランスでは、第一次世界大戦の体験を経て、ヒューマニストからよりコミュニズムに傾倒したバルビュスが有名です。彼は『征服者』や『地獄』などの作品を書きました。
日本のプロレタリア文学
日本でも有名なプロレタリア文学者が多くいますが、代表的な人物として次の方々が挙げられます。作品としては、
小林多喜二の「
蟹工船」や
徳永直の「
太陽のない街」などが有名です。
小林多喜二:「蟹工船」や「党生活者」などの作品で知られる作家で、労働者の苦悩や闘争を描きました。1933年に獄中で拷問死しました。
徳永直:「太陽のない街」や「炭鉱夫」などの作品で知られる作家で、印刷会社での労働争議を題材にした小説を書きました。1933年にプロレタリア文学から転向しました。
黒島伝治:「豚群」や「麦と兵隊」などの作品で知られる作家で、農村を舞台にしたプロレタリア文学を書きました。1934年にプロレタリア文学から転向しました。
平林たい子:「施療室にて」や「かういう女」などの作品で知られる女性作家で、自身の出産や結婚生活を描いた小説を書きました。1935年にプロレタリア文学から転向しました。
労働者階級がいかに資産家から搾取をされ続けてきたのか、労働者の権利が無碍にされているという現状を訴え、政治を批判した作品も多く、そのために政府によって
厳しい弾圧の対象となりました。
小林多喜二は治安維持警察に捉えられて、牢獄の中で獄中死をしています。
当時の世界情勢が文学に与えた影響
この時期の世界情勢をみてみるとわかるのですが、国内では
大正デモクラシー、世界では
ロシア革命が起こり、また世界恐慌によって
社会情勢の不安定さが浮き彫りになっていきます。
人々は、普通選挙権や労働者の権利、男女差別や部落差別など、様々な権利を求めて運動を行います。特にそれまで表に出ることの少なかった
低所得者層の訴えが、社会主義や共産主義思想と結びついて、プロレタリア文学を築き上げたと言ってもいいでしょう。
しかしながら小林多喜二らが弾圧されたあと、政府からの弾圧を恐れた文壇は、プロレタリア文学から自らの主張を放棄した文学へと転向していくことになるのです。