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20_80 民主政治の基本原理と日本国憲法 / 民主政治

人権と公共の福祉とは わかりやすい政治・経済87

著者名: レキシントン
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日本における人権と公共の福祉、そして外国人の人権


日本における人権の考え方は、すべての個人が尊重されることを基本としていますが、社会の中で人々が共に暮らしていくためには、時として権利同士がぶつかり合う場面が出てきます。こうした対立を調整し、社会全体の公平性を保つための指針となるのが「公共の福祉」という概念です。

ここでは、人権がどのような基準で制限されるのか、また、グローバル化が進む現代において外国人の人権がどのように扱われているのかについて、日本の憲法上のルールや基本的な考え方を整理して解説します。



1. 人権の調整役としての「公共の福祉」


日本国憲法において、国民には多くの自由や権利が保障されていますが、それらは決して「何をしてもよい」という無制限なものではありません。自分勝手な行動が他人の大切な権利を侵害してしまう場合、そこには一定のブレーキが必要になります。このブレーキの役割を果たすのが「公共の福祉」です。

人権が互いに衝突したり、矛盾が生じたりした際、公共の福祉は「どちらの権利をどの程度優先すべきか」を判断する公平な基準(人権相互の矛盾を調整する実質的公平の原理)として機能します。

一般的に、表現の自由などの「精神的自由」に比べて、経済活動に関わる「経済的自由」の方が、社会全体の利益のために、より広い範囲で制約(規制)を受けやすい傾向にあります。なお、思想・良心の自由といった「内心の自由」は、他者に危害を及ぼさない限り、公共の福祉による制限を一切受けない絶対的な自由とされています。

2. 人権が制限される二つの側面


人権の制限には、その目的に応じて大きく分けて二つの側面(考え方)があります。

まず一つ目は、他者の人権を侵害しないために課される「内在的制約(消極的・警察的規制)」です。これは社会生活を営む上での最低限のルールと言えます。例えば、他人の生命や健康を脅かしてはならないことや、人間としての尊厳を傷つけてはならないといった、他者の権利や安全を維持・尊重するために当然守るべき制限を指します。

二つ目は、主として経済的な自由に対して認められる「政策的制約(積極的・社会政策的規制)」です。これは、単に権利の衝突を避けるだけでなく、社会の中の経済的・社会的に弱い立場にある人々の生活を実質的に保障するために行われます。例えば、労働者の権利を守るための規制や、中小企業を保護するためのルールなどがこれに当たります。

3. 憲法における具体的な規定


日本国憲法では、人権と公共の福祉の関係について、複数の条文で言及しています。

まず、総論的な規定として第12条と第13条が重要です。第12条では、国民が持つ権利を「公共の福祉のために利用する責任」を負うことが明記され、第13条では、国民の権利は「公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする」と定められています。

また、個別の権利についても具体的な規定があります。第22条では居住や職業選択の自由について、第29条では財産権について、それぞれ公共の福祉に適合するように制限を受ける可能性があることが示されています。例えば、道路を拡張するために立ち退きが必要になったり、独占禁止法によって自由な取引が一部制限されたりするのは、こうした規定に基づいた公共の利益のための調整と言えます。

4. 現代的な議論と新しい視点


近年では、この「公共の福祉」という言葉をどう解釈すべきかについて、より厳密な議論が行われています。

かつては「社会全体の利益」や「国家の目的」という曖昧な言葉で人権を一律に制限しようとする傾向もありましたが、現在では、人権を制限できる根拠を「他者の人権との衝突を調整すること」に限定すべきだという考え方(一元的内在制約説など)が通説となっています。つまり、具体的な他人の権利を侵害する場合や、人の生命・健康を守るためにどうしても必要な場合に限って、公共の福祉による制限が許されるという慎重な姿勢が求められているのです。

5. 外国人の人権とその保障


現代の日本社会では、定住する外国人や就労目的で来日する人々が増えています。こうした中、人権の普遍的な性質(人間である以上、当然に認められる権利)に基づき、外国人の人権をどこまで認めるべきかという議論も欠かせません。

最高裁判所の判例(マクリーン事件など)においても、基本的人権の保障は「権利の性質上、日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、外国人に対しくまなく及ぶ」とされています。

具体的には、身体の自由や表現の自由などの基本的な自由権は、原則として外国人にも保障されます。ただし、自由権であっても「入国の自由」については、国家の主権に関わるため外国人には保障されないと解されています。

一方で、社会権(生存権など)や参政権(選挙権など)については、その保障の範囲が区別されています。

社会権:
最高裁は「限られた財源の中では自国民を優先的に保護することも許容される」としていますが、現在では実際の法律や福祉政策によって、段階的に外国人への社会保障の適用範囲が広げられてきています。

参政権:
国政における選挙権は日本国民のみに限定されます。しかし、地方参政権(地方自治体の選挙権)については、憲法上、法律によって永住者などの外国人に付与することは禁止されていないとする判例(最高裁傍論)もあり、時代の変化や地域社会の実態に合わせた慎重な議論が続けられています。

人権とは、自分一人だけのわがままを通すためのものではなく、他者の人権と共存していくためのものです。「公共の福祉」という言葉は、私たちが社会の中で互いに尊重し合い、誰もが心地よく暮らしていくための知恵と言えるでしょう。グローバル化が進み、多様な人々が共生するこれからの社会において、このバランスをどう保っていくかを考え続けることは、私たち一人ひとりに課せられた大切な課題です。
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・人権と公共の福祉とは わかりやすい政治・経済87

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『教科書 政治・経済』 山川出版社

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