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太陰暦とは 世界史用語123
著作名: ピアソラ
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太陰暦とは

太陰暦とは、月の満ち欠けの周期(朔望月、約29.5日)に基づいて年間の日数や月数を決める暦法のことです。太陰暦に対して、太陽の運行に基づく暦法を太陽暦と呼びます。現在、世界で最も広く使われている暦法はグレゴリオ暦で、これは太陽暦の一種です。しかし、イスラム教の暦法であるヒジュラ暦は太陰暦であり、宗教的な行事や祝祭日に用いられています。また、歴史的には、ユダヤ教の暦法や中国の暦法も太陰暦でしたが、現在では太陽暦との調整のために閏月を挿入する太陰太陽暦となっています。

太陰暦の特徴は、月の満ち欠けと暦の月が一致することです。しかし、12個の朔望月の合計は354日8時間48分34秒(354.36707日)であり、太陽暦の1年(365.24219日)よりも約11日短いです。そのため、太陰暦の月は太陽暦の季節と循環することになります。例えば、イスラム教の断食月であるラマダンは、太陽暦では約33年で一周します。このように、太陰暦は太陽暦と比べて季節との関係が乱れやすいという欠点があります。

太陰暦のもう一つの問題は、月の初めの日をどのように決めるかということです。太陰暦には、月の初めを月の出や月の形によって観測するものと、天文学的な計算によって決めるものがあります。観測に基づく太陰暦の代表例は、イスラム教のヒジュラ暦やユダヤ教のヘブライ暦です。これらの暦では、新月の日の夕方に月の細い三日月が見えたら、その日が新しい月の初日となります。しかし、観測には不確実性や気象条件の影響があります。そのため、観測に代わって固定的な算術的な規則によって月の初めを決める試みもあります。最も有名なものは、イスラム教の暦法における表暦と呼ばれるものです。これは、30年周期で11年が355日、19年が354日となるように閏日を挿入するもので、長期的には約2500太陽年あたり1日、約2570太陰年あたり1日の誤差があります。また、短期的には観測と1日から2日ほどずれることがあります。

計算に基づく太陰暦の代表例は、中国の暦法です。中国の暦法では、月の初日は天文学的な新月の日とします。しかし、天文学的な新月の日は時差によって異なるため、特定の標準時を用いて計算します。中国の暦法では、太陰太陽暦として太陽暦との調整を行います。そのため、閏月を挿入する規則が必要となります。中国の暦法では、19年間に7回の閏月を挿入することで太陽暦との誤差を約1日以内に抑えています。中国の暦法は、現在では公式な暦法ではありませんが、旧正月や中秋節などの伝統的な祝日や農業に関係する行事に用いられています。

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