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古代オリエント 2 古代エジプト文明の歴史と文化 ピラミッド時代、新王国とアメンホテプ4世の改革 |
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著作名:
ピアソラ
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古代オリエントの歴史を語る上で、メソポタミア文明と並び重要なのが、古代エジプト文明です。
メソポタミアではティグリス・ユーフラテスという2つの川が重要な役割を果たしましたが、エジプトでもナイル川が文明発祥に大きな影響を与えました。
この2つの文明はよく比較されるのですが、メソポタミアは地形的に様々な民族が抗争しながら土地を奪い合ったので、複雑な歴史と悲観的な文化が特徴です。一方、エジプトは地形的に外敵の侵入が難しかったので、同じ系統の民族の統治が長く続き、比較的単調な歴史と明るく楽観的な文化が特徴となりました。
古代エジプト人はハム語系の民族で、ヴィクトリア湖を水源とするナイル川のほとりに住む人々でした。
ナイル川は、水源地帯に季節的に豪雨が降り、7月から11月にかけて、定期的な氾濫を起こす川でした。氾濫が終わったあと、下流のエジプトの大地には川が運んできた肥沃な土が残されました。
この様子を、のちの古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは「エジプトはナイルのたまもの」と表現しました。
そのため、エジプトの農地は非常に生産性が豊かな土地で、次第に人々が集まってノモスという集落ができてきます。
ノモスは、ナイル川中流域の上エジプトに22、ナイル川下流域の下エジプトに20ほど成立します。
ナイル川の水源は南部のエチオピアで、北の地中海に向かって流れています。なので、南を上エジプト、北を下エジプトと呼びます。
やがて、ノモスの間に政治的なつながりができ、紀元前3000年ころ、上エジプトの王メネス(ナルメル)が下エジプトを征服して、統一国家をつくります。
古代エジプトに君臨した王をファラオといいます。メソポタミアの王が神の代理人だったのに対し、古代エジプトの王は神の化身、つまり神そのものでした。
古代エジプトは多神教の社会でしたが、ファラオは太陽神ラーの子として、強力な神権政治でエジプトを統治しました。
(太陽神ラー)
紀元前3000年のメネスの統一から、紀元前332年のアレクサンドロス大王の征服まで、エジプトには30の王朝ができますが、時代ごとに古王国・中王国・新王国にわかれます。
各時代ごとに、ナイル川流域には様々な都市が栄えます。下の地図で場所を確認してみましょう。
(ナイル川と重要な都市)
第3王朝から第6王朝までの時代を古王国時代といいます。
メネスが作ったとされるメンフィスに首都が置かれ、第4王朝の時代にはギザにピラミッドが作られます。
最大のものは第4王朝のクフ王の大ピラミッドで、この時代を別名ピラミッド時代ともいいます。
(左からカウラー王、カフラー王、クフ王のピラミッド)
第6王朝のあと、次第にファラオの権力が衰え各地で独立がすすみ、エジプト統一は一度失われます。
紀元前21世紀になると、上エジプトのテーベという都を中心に新しく王家ができ、再びエジプト全土を統一し、中王国時代がはじまります。第11・第12王朝のことです。
中王国時代には、官僚制が整備され中央集権化が進みましたが、紀元前17世紀に、セム語系の遊牧民族ヒクソスがエジプトに侵入し、中王国時代は終わります。
ヒクソスは、第15・第16王朝をエジプトにたて、支配したので、この時代、ヒクソスのもっていた馬や戦車がエジプトに伝わりました。
ヒクソスの支配も長くは続かず、エジプトの王朝は彼らを追放し、新しく新王国時代がはじまります。第18・第20王朝です。
首都は中王国時代と同じくテーベに置かれました。
第18王朝のハトシェプスト女王(在位紀元前1503頃~紀元前1482頃)は海外との交易をすすめ、その後のトトメス3世(在位紀元前1504頃~紀元前1450頃)はシリアやヌビア(現在のスーダン)へ積極的な征服活動を行いました。
トトメス3世ののち、アメンホテプ4世(在位紀元前1379頃~1362頃)というファラオが即位すると、王はさまざまな改革を行いました。
改革のきっかけは、宗教の問題でした。
この時代、首都テーベの守護神アモン(アメン)を信仰する神官たちが、神の化身であるファラオの権力を抑えるほどの勢力になっていました。
この状況をよく思っていなかったアメンホテプ4世は、政治介入をする神官たちの神を否定するため、首都をテーベからテル=エル=アマルナに遷都し、新しく唯一神アトンを信仰するように迫りました。
(アトンを信仰するアメンホテプ4世と家族)
アメンホテプ4世自身もイクナートン(「アトンに愛されるもの」)に改名し、都では自由で写実的なアマルナ美術が栄えました。
(アマルナ美術の代表作:王妃ネフェルティティの胸像)
アメンホテプ4世の死後、次のツタンカーメンの時代になると、改革は衰退しアモン神信仰が復活、メンフィスに一時的に遷都したあと再びテーベが首都になります。
第19王朝のラムセス2世(在位紀元前1304頃~紀元前1237頃)はシリアの領有をめぐってヒッタイトと戦い、カデシュの戦いに勝利します。
カデシュの戦いは世界最古の国際条約が結ばれた戦いでもあります。
このように、新王国はさまざまな面で発展していきますが、第21王朝は衰退王朝といわれ、以後はアッシリアやアケメネス朝ペルシアなどの外敵により衰退し、最終的に紀元前332年アレクサンドロス大王の征服によって古代エジプトは滅亡します。
古代エジプトはアマルナ時代を除いて、多神教の社会でした。
なかでも太陽神ラーは、のちにテーベの守護神アモンと融合しアモン=ラーになり、多くの人々に崇拝されます。
エジプト人は死後の世界を信じていて、冥界の神オシリスの最後の審判を受ける様子を描いた死者の書や、来世で必要となる肉体を保存するため、ミイラを作りました。
(死者の書:右がオシリス)
エジプト文明の歴史に欠かせないのが、ナイル川ですが、この川が定期的に氾濫したので、古代エジプトでは測地術が発達します。
測地術は、ピラミッドや神殿などの建築術にも大きな影響をあたえ、後の幾何学になりました。
また、ナイル川の氾濫と星の位置から太陽暦を発明し、1年を365日としました。
古代エジプトの文字は、3つにわかれていました。
絵文字から発達し、石碑などに刻まれる象形文字の神聖文字(ヒエログリフ)、パピルスでできた宗教書や公文書に使われ、神聖文字を簡略化した神官文字(ヒエラティック)、日常的に用い、もっとも簡略化した民用文字(デモティック)に大別されます。
(神聖文字 ヒエログリフ)
古代エジプトの文字は長い間解読されませんでしたが、19世紀にナポレオンのエジプト遠征でロゼッタストーンという石碑が発見されると状況が変わります。
ロゼッタストーンは、同じ内容が石碑の上部から神聖文字、民用文字、ギリシア文字にわかれて書かれていました。
(ロゼッタストーン)
フランスのシャンポリオンという学者がこれに気づき、一番下のギリシア文字を手がかりに、神聖文字や民用文字を解読していったのです。
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