更新日時:
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平家物語原文全集「殿上闇討 6」 |
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著作名:
古典愛好家
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陳じ申けるは、
「まづ郞従小庭に祗候(じこう)の由、全く覚悟仕(つかまつら)ず。但し近日人々あひたくまるる旨、子細あるかの間、年来の家人、事を伝へ聞くかによつて、その恥を助けんが為に、忠盛には知られずして、ひそかに参候の条、力及ばざる次第なり。もしなをその咎あるべくは、かの身を召し進ずべきか。次に刀の事、主殿司(とものつかさ)に預け置きをはんぬ。是を召し出され、刀の実否について、咎の左右あるべきか」
と申す。
「この儀尤も然るべし」
とて、その刀を召し出だして叡覧あれば、上は鞘巻(さやまき)のくろく塗つたりけるが、中は、木刀に銀薄をぞおしたりける。
「当座の恥辱をのがれんが為に、刀を帯する由あらはすといへども、後日の訴訟を存じて、木刀を帯しける用意のほどこそ神妙なれ。弓箭に携らむ者のはかりことは、尤(もっと)もかうこそあらまほしけれ。兼又郞従小庭に祗候(じこう)の条、且つは武士の郞等の習ひなり。忠盛が咎にはあらず」
とて、還而叡感に預かっしうへは、敢へて罪科の沙汰もなかりけり。
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