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蜻蛉日記原文全集「このごろは四月」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

このごろは四月

このごろは四月。祭見に出でたれば、かの所にも出でたりけり。さなめりと見て、むかひに立ちぬ。待つほどのさうざうしければ、橘の実などあるに、葵(あふひ)
をかけて、

あふひとかきけどもよそにたちばなの

といひやる。ややひさしうありて、

きみがつらさをけふこそはみれ

とぞある。

「にくかるべきものにては年へぬるを、など「今日」とのみいひたらん」


といふ人もあり。かへりて、

「さありし」


などかたれば

「「食ひつぶしつべき心ちこそすれ」とやいはざりし」


とていとをかしと思ひけり。                            




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