古代エジプトの測地術とは
測地術とは、地球の形や大きさ、位置などを測定する学問です。古代エジプトでは、紀元前3000年頃から測地術が発達しました。その理由は、主に二つあります。一つは、ナイル川の氾濫によって農地の境界が消えるため、再び測定する必要があったことです。もう一つは、ピラミッドや神殿などの巨大な建造物を建てるために、正確な測量が必要だったことです。
古代エジプト人は、測量に使う道具や単位を発明しました。最も基本的な道具は、ロープで作った三角形の枠で、エジプト語でメルクヘトと呼ばれました。メルクヘトは、直角を作るのに便利で、土地の面積や角度を測るのに使われました。また、水平を測るのには、水を入れた容器であるアストロラベを使いました。測量の単位としては、キュビットという長さの単位がありました。キュビットは、肘から中指の先までの長さで、約52.5センチメートルでした。また、度数法という角度の単位もありました。度数法は、円周を360度に分ける方法で、今でも使われています。
古代エジプト人は、測地術を使って、地球の形や大きさについても考えました。彼らは、地球が球形であるとは考えませんでしたが、地球が平らではなく、丸みを帯びているという考えには近づきました。例えば、紀元前3世紀のエラトステネスという学者は、アレクサンドリアとシエネ(現在のアスワン)という二つの都市の間の距離と、太陽の高度の違いを測定して、地球の円周を計算しました。彼の計算は、現在の値と比べて約15%ほど大きかったものの、当時としては驚異的な精度でした。
古代エジプトの測地術は、建築や農業だけでなく、天文学や数学・暦学にも影響を与えました。また、ギリシャやローマなどの他の文明にも伝わりました。