パピルスとは
古代エジプトのパピルスとは、世界で最初に作られた紙の一種であり、またその紙を作るために利用された植物の名前でもあります。パピルスという植物は、シュロ科のセンボンスゲ属に属し、ナイル川のデルタ地帯や他の水辺に生えていました。現在では、エジプトではほとんど見られなくなりましたが、暖かい地域や温室では観賞用に栽培されています。英語の紙(paper)という単語の語源です。
パピルスという紙は、パピルスの茎の中心部分にある繊維質の部分を細く切り、水に浸して軟らかくした後、互いに交差させて重ね、乾燥させることで作られました。パピルスの茎に含まれる樹液が接着剤の役割を果たし、紙のような平らで滑らかな表面を形成しました。この工程は、古代エジプト人が残した証拠は少ないものの、1965年にハッサン・ラガブ博士が研究によって再発見しました。
パピルスという紙は、古代エジプトでは主要な書き物の材料として使われ、ギリシャやローマ帝国などの古代世界に広まりました。パピルスが普及する前は、多くの文化では粘土板に書いていました。パピルスは、巻物や書物のほか、手紙や法律文書などにも用いられました。プリニウスという古代ローマの学者が、パピルスの製紙法について記述しています。
パピルスという植物は、紙以外にもさまざまな用途がありました。パピルスの茎は、編んでかごやマット、ロープやサンダルなどにしたり、束ねて船にしたり、乾燥させて燃料にしたりしました。パピルスは、高さが約4.6メートルにもなる草本で、水深90センチメートルまでの静かに流れる水に生えます。葉はなく、茎は三角形でふさふさした先端に小さな花がつきます。花は茶色や緑色の房状になり、その後にナッツのような実ができます。パピルスは日光を好み、霜に弱い熱帯植物です。