はじめに
このテキストでは、万葉集の第5巻に収録されている「
梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降りつつ」(八二三)の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。この和歌は、平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった万葉集『
梅花の歌三十二首并せて序』に収録された32首のうちのひとつです。
原文
梅の花 散らくはいづく (※1)しかすがに この(※2)城の山に (※3)雪は降り(※4)つつ
ひらがなでの読み方
うめのはな ちらくはいづく しかすがに このきのやまに ゆきはふりつつ
現代語訳
梅の花が散るというのはどこのことでしょうか。そうはいうものの、この城の山には雪(梅の花)が降り続いていますね。
解説
大監伴氏百代(=大伴百代)の歌です。大伴旅人主催の梅花の宴にて詠まれた32首のひとつです。梅花の宴とは文字通り梅の花を題材とした歌を詠む会で、当時太宰府の長官であった大伴旅人を中心に開催されました。そのときに詠まれた32首にはすべて梅の花が含まれています。
この歌は、梅花の宴で大伴旅人が詠んだ「
わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも」を受けて詠まれたものです。
単語・文法解説
(※1)しかすがに | 副詞。「そうはいうものの」の意味 |
(※2)城の山 | 大宰府市などにまたがってそびえる大野山のこと。梅花の宴で集まっている大伴旅人宅があった山というわけではない |
(※3)雪 | 散る梅の白い花びらを雪にみたてている |
(※4)つつ | 接続助詞。ここでは「〜し続けている」と継続の意味で訳す |