いぶかし/訝し
このテキストでは、シク活用の形容詞「
いぶかし/訝し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
形容詞・シク活用
未然形 | いぶかしく | いぶかしから |
連用形 | いぶかしく | いぶかしかり |
終止形 | いぶかし | ◯ |
連体形 | いぶかしき | いぶかしかる |
已然形 | いぶかしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | いぶかしかれ |
■意味1
気がかりだ、心もとない、心が晴れない。
[出典]:
狩りの使ひ 伊勢物語
「つとめて、
いぶかしけれど、わが人をやるべきにしあらねば、いと心もとなくて待ちをれば...」
[訳]:早朝、
気がかりであるのですが、自分の所の人を(使いに)やれるものではないので、たいそうじれったく待っていたところ...
■意味2
(様子をもっと)
知りたい、見たい、聞きたい、はっきりさせたい。
[出典]:
或者、子を法師になして 徒然草
「この薄を
いぶかしく思ひけるやうに、一大事の因縁をぞ思ふべかりける。」
[訳]:このすすきを
知りたいと思ったように、第一にすべき重大なこと(悟りをひらく機縁)を思うべきであった。
■意味3
不審だ、疑わしい。
[出典]:紅葉賀 源氏物語
「かうさだ過ぐるまで、などさしも乱るらむ、といぶかしくおぼへたまひければ...」
[訳]:このように(女性としての)盛りを過ぎるまで、どうしてそんなにふしだらなのか、と不審にお思いになったので...