やく/焼く
このテキストでは、古文単語「
やく/焼く」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「やく」には
①カ行四段活用
②カ行下二段活用
の用法がある。
①カ行四段活用
未然形 | やか |
連用形 | やき |
終止形 | やく |
連体形 | やく |
已然形 | やけ |
命令形 | やけ |
■意味1:他動詞
火をつけて燃やす、焼く、加熱する。
[出典]:万葉集
「来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ」
[訳]:来ない人を待つ(私は)、松帆の浦の夕なぎ(ころに海辺)に焼く藻塩のように、身も焦がれ続けています
■意味2:他動詞
心を悩ます、胸を焦がす。
[出典]:万葉集
「我が心焼くも我なりはしきやし君に恋ふるも我が心から」
[訳]:私の心を悩ますのも私だ。いとしいあなたに恋い焦がれるのも私の心からだ
■意味3:他動詞
おだてる、機嫌を取る。
[出典]:好色一代女 井原西鶴
「人をよく焼くとて、野墓のるりと名によばれて...」
[訳]:人をよくおだてるということで、野墓のるりという名で呼ばれて...
②カ行下二段活用
未然形 | やけ |
連用形 | やけ |
終止形 | やく |
連体形 | やくる |
已然形 | やくれ |
命令形 | やけよ |
■意味1:自動詞
火がついて燃える、焼ける。
[出典]:
絵仏師良秀 宇治拾遺物語
「向かひに立ちて、家の
焼くるを見て、うちうなづきて、ときどき笑ひけり。」
[訳]:(良秀は燃え上がる家の)向かいに立って、家が
焼けるのを見て、うなずいて、時々笑っていました。
■意味2:自動詞
心が乱れる、思い焦がれる、恋い慕う。
[出典]:万葉集
「海娘子らが焼く塩の思ひそ焼くる我が下心」
[訳]:海人の娘たちが焼く塩のように気持ちが思い焦がれる、私の心の内では