口語訳(現代語訳)
孔子泰山の側を過ぐ。
孔子が泰山の麓を通りかかりました。
婦人の墓に哭する者有りて哀しげなり。
墓の前で声をあげてなく婦人がいて、悲しげな様子です。
夫子式して之を聴き、子路をして之に問はしめて曰く、
先生は(車の前にある横木に手をかけて)車上から礼をしてその夫人の泣き声を聞き、(門人の)子路に、婦人に尋ねさせて言うことには、
「子の哭するや、壱に重ねて憂ひ有る者に似たり。」と。
「あなたが泣いている様子から、度重なる不幸がおありのようですが。」と。
而ち曰く、
すると(婦人が)言うことには、
然り。昔者吾が舅虎に死せり。吾が夫又焉に死せり。今吾が子又焉に死せり。」と。
「はい。昔、私の舅が虎に殺されました。私の夫もまた虎に殺されました。そして今、私の子供が虎に殺されたのです。」と。
夫子曰く、
先生が言うことには、
「何為れぞ去らざるや。」と。
「どうして(この土地から)去らないのですか」と。
曰く、
(婦人が)言うことには、
「苛政無ければなり。」と。
「ひどい政治がないからです」と。
夫子曰く、
先生が言うことには、
「小子之を識せ。苛政は虎よりも猛なり。」と。
「お前たちこれを覚えておきなさい。ひどい政治は獰猛な虎よりもひどいのだ」と。
【英語:動詞を修飾する3パターンの副詞】
単語・文法解説
| 哭 | 声をあげて泣く |
| 於 | 置き字。「~において(場所)、〜によって(理由)、〜よりも(比較)」を表す。この物語ではこの3つの意味を使い分けている |
| 而 | 置き字。文章の接続を表すもの。~して、~だけれどもの意味 |
| 式 | 車の前にある横木に手をかけて礼をすること |
| 使子路問 | 「使AB」で「AにBをさせる」という使役を表す。ここでは「子路に尋ねさせる」となる |
| 焉 | 代名詞でここでは「虎」を指す |
| 何為不去也 | 「何為〜也」で「どうして〜か?」と訳す。ここでは「どうして去らないのか」となる |
| 識 | 書きつける、記すの意味 |
| 苛政猛於虎 | 「AB於C」で「AはCよりもB」と訳す。ここでは「苛政は虎よりも猛である」となる |