風姿花伝『七歳』
ここでは、風姿花伝の中の『七歳』の現代語訳と解説をしています。
原文(本文)
この芸において、
おほかた、七歳をもて初めとす。このころの能の稽古、必ず、そのもの
自然とし出だす事に、得たる風体あるべし。舞・働きの間、音曲、もしくは怒れる事などにてもあれ、
ふとし出ださん
かかりを、うち任せて、心のままにせさすべし。
さのみに、
よきあしきとは教ふべからず。あまりにいたく
諫むれば、童は気を失ひて、能、
ものくさくなりたちぬれば、やがて能は止まるなり。
現代語訳(口語訳)
この芸では、だいたい、七歳をもって(稽古を)始める年齢とします。この頃の能の稽古は、必ず、その子が自ら(気のおもむくままに)やる事の中に、(その子が)生まれつきもっている芸風(の片鱗)があるものです。舞や動作の間、音楽的な要素、もしくは怒りの演技などであっても、(子どもが)ふと、自らやるであろう様子を、まかせて、(彼の)心に思うようにさせるのがよいです。そうむやみに、(これが)正しい(これが)正しくないと教えるべきではありません。あまり厳しくいましめると、子どもはやる気を失って、芸を稽古するのがおっくうになってしまい、やがて、芸の上達は止まってしまいます。
品詞分解
※品詞分解:
風姿花伝『七歳』の品詞分解
単語解説
おほかた | だいたい、おおざっぱに言って |
自然 | 「じねん」と読む |
音曲 | 「おんぎょく」と読む。能楽の音楽的な要素のこと |
かかり | 様子 |
さのみ | そうむやみに |
いたし | 精神的につらい、肉体的に痛い |
諫む | 「いさむ」と読む。「いましめる」の意味 |
ものくさし | おっくうである、面倒くさい |