ふと
※「ふと」には
①副詞
②浮図/浮屠(名詞)
などの用法があるが、ここでは「①副詞」を扱う。
副詞
■意味1
たやすく、簡単に。
[出典]:竜の頸の玉 竹取物語
「わが弓の力は、竜あらばふと射殺して、首の珠は取りてむ。」
[訳]:私の弓の力であれば、もし竜がいるものならたやすく射
殺して、首の珠を手に入れられるだろう。
■意味2
さっと、たちまち、すぐに。
[出典]:
かぐや姫の昇天 竹取物語
「中将取りつれば、
ふと天の羽衣うち着せ奉りつれば、翁をいとほし、かなしと思しつることも失せぬ。」
[訳]:中将が(壺を)取ったので、(天人が)
さっと天の羽衣を(かぐや姫に)お着せ申し上げたところ、翁を気の毒だ、ふびんだとお思いになっていたことも( 天の羽衣の影響でかぐや姫の心から)消えてしまいました。
■意味3
不意に、急に、思いがけず。
[出典]:
九月ばかり 枕草子
「少し日たけぬれば、萩などの、いと重げなるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに、
ふとうへざまへあがりたるも、いみじうをかし...」
[訳]:少し日が高くなると、萩などで、(露がたくさんついて)とても重たそうであるものに、露が落ちると枝がすこし揺れ動いて、人が手を触れないのに、
急に上の方へ跳ね上がったのも、とても趣があります...