随筆とは
エッセーとも呼ばれる随筆は、
筆者が見聞き、体験をしたことを通じて感じたことを記した文章のことです。考えをただツラツラと書いたものなので、評論文のようにかっちりとしたものではなく、
個人的な考えや感じたことが自由に書かれています。
随筆とは、文学の形式の一つで、筆者が自分の経験や読書などから得た知識を元にして、それに対する感想や思索をまとめた文章です。随想やエッセイなどとも呼ばれています。
日本の随筆の起源は、10世紀末に清少納言によって書かれた『枕草子』と言われています。その後も、鴨長明の『方丈記』や吉田兼好(兼好法師)の『徒然草』など、随筆の作品が登場しました。江戸時代に入ると、文学的な随筆だけでなく、考証や見聞録などの随筆も生まれました。近世の随筆には、本居宣長の『玉勝間』、松平定信の『花月双紙』、新井白石の『折たく柴の記』、天野信景の『塩尻』などがあります。
随筆は形式や内容が非常に広範で、一つに統一的に捉えることは難しいとされています。しかし、随筆は筆者の個性や才能を端的に表現する手段であり、文化や思想の貴重な証言ともなり得るのです。
日本の三大随筆とは、『枕草子』、『方丈記』、『徒然草』のことを指します。これらは日本文学史上初期の随筆作品であり、それぞれ異なる時代や作者の視点から、自由に思いついたことや感想を書き綴ったものです。
『枕草子』は平安時代中期に清少納言が書いた作品で、当時の貴族社会や自然美を「をかし」という言葉で表現しています。有名な冒頭の文章は「春はあけぼの」です。
『方丈記』は鎌倉時代初期に鴨長明が書いた作品で、自身が体験した五大災害や出家後の生活を通して、この世の無常さや理不尽さを描いています。有名な冒頭の文章は「ゆく川の流れは絶えずして」です。
『徒然草』は鎌倉時代末期に兼好法師が書いた作品で、自身の経験から得た考えや逸話などを多種多様に書き綴っています。有名な冒頭の文章は「つれづれなるままに」です。
これらの三大随筆は、日本人の美的感覚や無常感などを表現した優れた文学作品として高く評価されており、現代でも多くの人に読まれています。
日本三大随筆の特色
例えば
吉田兼好の
徒然草の冒頭です。
「
つれづれなるまゝに、日暮らし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」
現代語訳すると、「
手持ち無沙汰なので、一日中、硯を前にして心に浮かんでは消え、浮かんでは消えていくことをなんとなく書きつづっていると、気が滅入ってしまいそうになる。」といった感じでしょうか。
このように、自分の感じたことを気ままに書いているのです。
何故そのように思うのかを理由をつけて説明しようとするのが評論文ですが、これは違いますよね。
清少納言の
枕草子、
鴨長明の
方丈記、そして
吉田兼好の
徒然草、この3つは日本文学史の三大随筆と呼ばれていますので覚えておきましょう。