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世界史における黄色人種(モンゴロイド) 世界史用語75
著作名: ピアソラ
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黄色人種(モンゴロイド)とは

黄色人種(モンゴロイド)とは、人類学の歴史的な分類の一つであり、主にアジア、アメリカ、オセアニア、一部のヨーロッパの地域に住む人々を指す用語です。この用語は、生物学的な人種の概念に基づいており、現在では科学的な根拠に欠けると考えられています。しかし、モンゴロイドという概念は、世界史における重要な役割を果たした多様な文化や民族の歴史を理解するための一つの視点として、依然として有用であると言えるでしょう。

モンゴロイドという用語は、18世紀にドイツの学者クリストフ・マイナースによって初めて導入されました。彼は人類を「タルタル・コーカサス人」と「モンゴリアン」という二つの人種に分け、前者は美しく、後者は「身体と精神が弱く、悪徳で美徳に欠けている」と信じていました。その後、彼の同僚であるヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハが、人類を五大人種(コーカソイド、モンゴロイド、ネグロイド、アメリカノイド、マライオイド)に分けることで、この概念を広めました。ブルーメンバッハは、モンゴロイドをオビ川、カスピ海、ガンジス川の東に住む人々と定義し、マレー人を別の人種としました。また、北極のエスキモーやヨーロッパのフィン人(ラップランド人を含む)もモンゴロイドに含めました。

19世紀になると、人種に関する議論は、単一起源説と多元起源説の対立の中で展開されました。単一起源説は、人類は一つの祖先から発生したと主張し、多元起源説は、人種ごとに異なる起源を持つと主張しました。この時期には、人種の違いを利用して、植民地主義や奴隷制度を正当化するための科学的人種主義が台頭しました。モンゴロイドは、コーカソイドやネグロイドと比較して、劣った人種とみなされることが多かったです。

しかし、人種の概念に対する批判も存在しました。例えば、イギリスの人類学者トマス・ヘンリー・ハクスリーは、人種の分類はあまりにも恣意的であり、人類は一つの種であると主張しました。また、ドイツの人類学者ルドルフ・マーティンは、人種の特徴は環境や遺伝の影響によって変化することを示し、人種の固定性や純粋性を否定しました。さらに、20世紀になると、遺伝学や分子生物学の発展によって、人種の概念は生物学的な根拠に欠けることが明らかになりました。人類の遺伝的多様性は、人種間よりも人種内に大きく存在し、人種の境界は曖昧であることが分かったのです。現在では、人種は社会的な構築物であり、人類の自然的な側面ではないと考えられています。

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