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後期旧石器時代とは 世界史用語45
著作名: ピアソラ
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後期旧石器時代とは

後期旧石器時代とは、人類の文化史における重要な時代です。約4万年前から約1万年前までの間に、人類は石器の製作技術や芸術表現などにおいて大きな進歩を遂げ、この時代には、ヨーロッパやアジアにおいてネアンデルタール人が絶滅し、ホモ=サピエンスが主流となりました。また、アメリカ大陸への人類の移動も始まり、後期旧石器時代の人類は、狩猟採集生活を営みながら、気候や環境の変化に適応していきました。

後期旧石器時代の石器は、前期や中期の石器に比べて、より高度で多様なものとなりました。石器の製作には、打製法や剥片法だけでなく、刃状片法や圧縮法などが用いられ、これらの方法によって、細長く鋭利な刃状片や薄く平らな刃先を持つ石器が作られました。これらの石器は、ナイフや槍、矢じりなどに加工され、狩猟や剥製などに用いられました。また、骨や角、貝殻などの材料も石器の製作に利用され、骨や角は、釣り針や裁縫針、銛などに加工されました。貝殻は、飾りや貨幣として用いられました。後期旧石器時代の石器は、地域によって異なる特徴を持つ文化が形成され、これらの文化は、石器の形態や製作技術だけでなく、芸術や宗教などにおいても独自の発展を遂げていきました。



後期旧石器時代の芸術は、人類の精神文化の高度化を示すものでした。後期旧石器時代の芸術には、洞窟壁画、彫刻、装身具などがあります。洞窟壁画は、ヨーロッパやアフリカなどの地域で発見されており、動物や人間、幾何学模様などが描かれており、洞窟壁画の制作には、石や木の炭、鉱物の顔料、動物の脂などが用いられました。洞窟壁画の意味や目的は、狩猟の成功を祈願するものや、宗教的な儀式に関連するものなど、様々な説があります。有名な洞窟壁画の例としては、フランスのラスコー洞窟やショベ洞窟、スペインのアルタミラ洞窟などが挙げられます。彫刻は、石や骨、角、象牙などの材料で作られ、彫刻の主なモチーフは、動物や人間、特に女性でした。女性像は、豊かな乳房や臀部を持つものが多く、母性や豊穣の象徴と考えられています。女性像の代表的な例としては、オーストリアのヴィレンドルフの女性像やフランスのラ・シェル・オー・ヴェニュスなどが挙げられます。装身具は、貝殻や動物の歯や骨などを穴を開けて糸に通したもので、身分や地位の象徴としてだけでなく、魔除けやお守りとしても用いられたと考えられています。

後期旧石器時代の人類は、狩猟採集生活を営みながら、気候や環境の変化に適応していきました。後期旧石器時代の前半は、最終氷期と呼ばれる寒冷な時期であったため、この時期には、氷河が広がり、海面が低下し、陸地が広がった時代でした。人類は、マンモスやトナカイなどの大型動物を狩るために、氷河の縁やステップ・タンドラ地帯に住み、火や衣服や小屋などで寒さに対処し、動物の皮や骨や脂などを利用しました。後期旧石器時代の後半は、最終氷期が終わり、気候が温暖化し始めた時期で、この時期には、氷河が後退し、海面が上昇し、森林や草原が広がりました。人類は、イノシシやシカなどの小型動物や魚や貝などの水産物を狩るために、森林や河川や海岸に住みました。人類は、植物や木の実などの採集も行い、食物の多様化を図りました。また、人類は、新しい土地への移動も行いました。アジアからベーリング地峡を渡ってアメリカ大陸への移動は、約1万5千年前から約1万年前にかけて行われたと考えられています。

後期旧石器時代は、人類の文化史において画期的な時代であり、石器の製作技術や芸術表現などにおいて大きな進歩を遂げました。また、人類は、気候や環境の変化に適応しながら、狩猟採集生活を営み、後期旧石器時代の終わりには、農耕や牧畜などの新しい生活様式が始まり、中石器時代・新石器時代へと移行していきました。

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