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歴史家ヘロドトスとは 世界史用語131
著作名: ピアソラ
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歴史家ヘロドトス

ヘロドトスは古代ギリシアの歴史家で、『歴史』という著作で有名です。彼はペルシア戦争を詳細に記録し、歴史的事実を系統的に調査する最初の人物とされます。そのため、ローマの弁論家キケロによって「歴史の父」と呼ばれました。彼は自分が見聞きしたことや聞いたことを報告したと述べていますが、現代の歴史学や考古学の研究によって、彼の記述の多くが事実に基づいていることが確認されています。

ヘロドトスの生涯については、彼自身の著作から得られる情報が主なものですが、それでも不確かな点が多く残っています。彼は紀元前484年頃にアナトリア半島のハリカルナッソスという都市で生まれました。この都市は当時ペルシア帝国の支配下にありましたが、ギリシア人の植民地でした。ヘロドトスは幼少期にペルシア帝国の内情やギリシアへの侵攻の準備について目撃者の話を聞いたかもしれません。彼の一族は名門であり、詩人のパニュアッシスという親戚がいました。ヘロドトスは故郷の女傑アルテミシア1世を尊敬していましたが、その後の僭主リュグダミスに反対して追放され、サモス島で亡命生活を送りました。

ヘロドトスはサモス島を離れてアテナイに行き、そこで『歴史』の執筆を始めたと考えられます。彼はアテナイの指導者ペリクレスの計画によって建設された新しい植民地トゥリオイに移住しましたが、その理由は不明です。彼は人生の後半にエジプトやバビロニアなどの地域を旅し、そこで得た知識を『歴史』に取り入れました。彼は紀元前425年頃に亡くなりましたが、その場所はトゥリオイかアテナイのどちらかとされています。



ヘロドトスの『歴史』は全9巻からなりますが、この分類は彼自身のものではなく、後世の学者によるものです。この作品はペルシア戦争を中心に展開されますが、それだけではなく、ギリシアやペルシアの歴史や文化、さらにはエジプトやバビロニアなどの地域の風土や民俗なども紹介されます。ヘロドトスは自分の観察や聞き取り調査だけでなく、古代の神話や伝承、文献なども引用しています。彼の作品は歴史的事実だけでなく、物語や逸話も豊富に含んでおり、読者の興味を引くものです。彼は歴史的事実を単に記録するだけでなく、その原因や意義を探求しようとしました。彼はギリシア人とペルシア人の対立を単純な善悪の対立とは見なさず、両者の文化や価値観の違いを理解しようとしました。彼はまた、人間の運命は神々の意志によって左右されるという考えにも疑問を投げかけ、人間の自由意志や責任にも注目しました。

ヘロドトスの『歴史』は、西洋史学の始まりとして重要な作品です。彼は歴史を調査・探求するという新しい方法を開拓し、後世の歴史家に多大な影響を与えました。彼はまた、古代ギリシアの思想や文化、ペルシア戦争の経過や背景、さらには当時の地中海世界の多様な風景や人々の生活を生き生きと描写し、現代の読者にも魅力的な作品を残しました。

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