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百人一首『立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む』現代語訳と解説(掛詞・序詞など) |
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著作名:
走るメロス
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立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
このテキストでは、百人一首に収録されている歌「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」の現代語訳・口語訳と解説(掛詞・序詞など)、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、古今和歌集にも収録されています。
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。
立ち別れ (※1)いなばの山の 峰に生ふる (※2)まつとし聞かば 今帰り来む
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
(私はあなたと)お別れをして行きます。(赴任先の)因幡の山の峰に生えている松ではないですが、(あなたが私を)待つと聞いたならば、すぐにでも帰ってまいりましょう。
この歌の詠み手は、在原業平の兄、在原行平(ありわら の ゆきひら)です。百人一首には中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)の名で収録されています。
平在原行が国守として因幡(現在の鳥取県東部)へと赴任するときに、京の人に向けて詠んだ歌です。京への名残惜しさを感じさせる別れの歌です。
現在この歌は、行方不明になった飼い猫が戻ってくるように願掛けをするとき、おまじないの歌としても親しまれています。
(※1)いなば | 現在の鳥取県東部。掛詞については下記参照。 |
「いなばの山の 峰に生ふる」が、「まつ」を導く序詞。
地名の「因幡」と「往なば」をかけた掛詞。ナ行変格活用「往ぬ」の未然形「往な」+接続助詞「ば」で「行ってしまったならば」と訳す。
「松」と「待つ」をかけた掛詞。
句切れなし。
※名詞は省略しています。
立ち別れ | ラ行下二段活用「たちわかる」の連用形 |
いなば | 「因幡」またはナ行変格活用「いぬ」の未然形「いな」+接続助詞「ば」 |
の | 格助詞 |
山 | ー |
の | 格助詞 |
峰 | ー |
に | 格助詞 |
生ふる | ハ行上二段活用「おふ」の連体形 |
まつ | 「松」またはタ行四段活用「まつ」の終止形 |
と | 格助詞 |
し | 副助詞 |
聞か | カ行四段活用「きく」の未然形 |
ば | 接続助詞 |
今 | 副詞 |
帰り来 | カ行変格活用「かへりく」の未然形 |
む | 意志の助動詞「む」の終止形 |
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
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