更新日時:
|
|
枕草子『古今の草子を(いと久しうありて〜)』の現代語訳と解説 |
|
著作名:
走るメロス
54,176 views |
ここでは、枕草子の『古今の草子を(いと久しうありて〜)』を現代語訳をしています。タイトルが『古今の草子を』となっていますが、「清涼殿のうしとらの隅の北のへだてなる御障子には〜」からなる段の一節です。
いと久しうありて、起きさせ給へるに、なほこの事勝ち負けなくてやませ給はむ、いとわろしとて、下の十巻を、明日にならば、ことをぞ見給ひ合するとて、今宵定めてむと、大殿油まゐりて、夜更くるまで読ませ給ひける。されど、つひに負け聞えさせ給はずなりにけり。
『うへ、渡らせ給ひて、かかる事。』
など、殿に申しに奉られたりければ、いみじう思し騒ぎて、御誦経など数多せさせ給ひて、そなたに向きてなむ、念じ暮さし給ひける。すきずきしう、あはれなる事なり。」
など、語り出させ給ふを、うへも聞しめし、めでさせ給ふ。
「われは三巻四巻だにえ見果てじ。」と仰せらる。
「昔は、えせ者も皆をかしうこそありけれ。」
「このごろは、かやうなる事やは聞ゆる。」
など、御前に候ふ人々、うへの女房、こなた許されたるなど参りて、口々言ひ出でなどしたるほどは、誠につゆ思ふ事なく、めでたくぞおぼゆる。
(帝は)だいぶしばらく経ってから、お目覚めになられると、やはりこの事(歌当て)の勝ち負けをつけずに終わらせてしまわれるのは、とてもよくないと(お思いになっています)。(全20巻のうちの)下の十巻を、明日になると、(女御はこの勝負に備えて)別の本をご覧になって参考にするだろうと(帝はお思いになり)、今夜のうちに勝負を決してしまおうと、大殿油に火をつけて、夜が更けるまでお読みになられました。しかし、(女御は、帝に)最後までお負け申し上げなさいませんでした。
『天皇が女御のところにいらっしゃって、このような事を(なさっています)。』
などと、(女御の父である)殿に(女御が使いをたてて)お知らせ申し上げたところ、(殿は)大変心配なさって、僧に経を詠ませることなどをたくさんさせなさって、宮中の方角に向かって、(娘が間違えないようにと)お祈りを続けられました。風流があって、趣深く感じることです。」
『天皇が女御のところにいらっしゃって、このような事を(なさっています)。』
などと、(女御の父である)殿に(女御が使いをたてて)お知らせ申し上げたところ、(殿は)大変心配なさって、僧に経を詠ませることなどをたくさんさせなさって、宮中の方角に向かって、(娘が間違えないようにと)お祈りを続けられました。風流があって、趣深く感じることです。」
などと、(中宮定子様が)語り始められたのを、帝(一条天皇)もお聞きになって、賞賛なさいます。
「私は3巻4巻でさえ読み終えることはできないだろう。」
と(帝は)おっしゃいます。
「昔は、身分の低い者なども皆、風流だったのですね。」
「最近は、このようなことは聞くでしょうか、いや聞いたことがありません。」
など、(中宮定子様の)御前に控える人々や、一条天皇の(世話係りである)女房で、(中宮の部屋に)入室を許された者などが参って、口々に言い出している様子は、本当にまったく気がかりなことなく、すばらしいことがと思われます。
1ページ
|
前ページ
|
1/2 |
次ページ |
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
枕草子『古今の草子を(村上の御時に〜)』の現代語訳と解説
>
百人一首『しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで』現代語訳と解説(倒置法など)
>
『神奈備(かむなび)の三室(みむろ)の山を秋行けば錦断ち切る心地こそすれ』現代語訳と品詞分解
>
高校古文『思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを』わかりやすい現代語訳・品詞分解
>
源氏物語『須磨・須磨の秋』(前栽の花、いろいろ咲き乱れ〜)のわかりやすい現代語訳と解説
>
竹取物語冒頭『かぐや姫の成長』テストで出題されそうな問題
>
最近見たテキスト
枕草子『古今の草子を(いと久しうありて〜)』の現代語訳と解説
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング