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蜻蛉日記原文全集「さて廿余日にこの月もなりぬれど」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

さて廿余日にこの月もなりぬれど

さて廿余日にこの月もなりぬれど、あとたえたり。あさましさは、

「これして」


とて、冬のものあり。

「御ふみありつるは、はやおちにけり」


といへば、

「おろかなるやうなり、かへりごとせぬにてあらん」


とて、なにごとともしらでやみぬ。ありしものどもはして、文もなくてものしつ。

そののち、ゆめのかよひぢたえて、年くれはてぬ。

つごもりにまた、

「これしてとなん」


とて、はては文だにもなうてぞ下襲(したがさね)ある。いかにせましと思ひやすらひて、これかれにいひあはすれば、

「なほこのたびばかり心みにせよ。いと忌みたるやうにのみあれば」


など、さだむることありて、とどめて、きたなげなくして、ついたちの日、大夫にもたせてものしたれば、

「「いときよらなり」

ぬとなんありつる」


とてやみぬ。あさましといへばおろかなり。




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