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『瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ~』わかりやすい現代語訳と解説
著作名: 走るメロス
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『瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ』現代語訳と解説

瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 

いづくより 来りしものそ 目交に もとなかかりて 安眠しなさぬ


このテキストでは、万葉集に収録されている歌「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ」の現代語訳・口語訳と解説、品詞分解を記しています。作者は山上憶良です。




万葉集とは

万葉集は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集です。平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった『梅花の歌三十二首并せて序』をはじめ、天皇や貴族、役人や農民など様々な身分の人々が詠んだ4500以上の歌が収録されています。

長歌と反歌

五・七の句音を3回以上繰り返し、七・七で終わるスタイルの和歌を「長歌」と言います。そしてその長歌のあとに添えられる短い歌のことを「反歌」と言います。長歌のあとには反歌がつくというスタイルが多いです。

このテキストで扱う「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ」は長歌にあたり、以下の反歌が付いています。

反歌

銀も 金も玉も 何せむに 優れる宝 子にしかめやも

歌の解説


原文

【長歌】
瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ 

いづくより来りしものそ目交もとなかかりて安眠なさ

【反歌】
銀も金も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも


ひらがなでの読み方

うりはめば こどもおもほゆ くりはめば ましてしぬはゆ

いづくより きたりしものそ まなかひに もとなかかりて やすいしなさぬ

【反歌】
しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも



現代語訳

瓜を食べれば(残してきた)子どものことが自然に思われる。粟を食べれば、いっそうしのばれる。

いったい子どもたちはどこから来たものなのだろうか(どのような縁で、私の子どもとしてやってきたのだろうか)。目の前にやたらと(子どもたちの姿が)ちらついて、安眠させてくれないことよ。


【反歌】
銀も金も宝石も、どうしてそれらより優れている子ども(という宝)に宝として及ぶだろうか。いや及ぶまい。


解説

山上憶良は子どもを思う歌を多く残しています。この歌もその1つで、好きな瓜や粟を食していると、子どものことが思い出されてしょうがないと始まっています。きっとこの子どもは瓜や粟が好きだったのでしょう。さらには子どものことをあまりに思うあまり、その場にいるような錯覚でうまく眠ることができないと続いており、子どもを溺愛している様子が歌から感じ取れます。

反歌にしても、銀や金、宝石よりも子どもは私にとっては宝で、これに勝るものはないと、子どもを持つ親の気持ちがとても反映された美しい歌ですね。


品詞分解

※名詞は省略しています。



長歌

食めマ行四段活用「食む」の已然形
接続助詞
子ども
思ほゆヤ行下二段活用「思ほゆ」の終止形
食めマ行四段活用「食む」の已然形
接続助詞
まして副詞
偲はゆ連語またはハ行四段活用「偲ふ」の未然形「偲は」+自発の助動詞「ゆ」の終止形
いづく代名詞
より格助詞
来りラ行四段活用「来たる」の連用形
過去の助動詞「き」の連体形
もの
係助詞
目交
格助詞
もとな副詞
かかりラ行四段活用「かかる」の連用形
接続助詞
安眠
副詞
なさサ行四段活用「なす」の未然形
打消の助動詞「ず」の連体形


反歌

係助詞
係助詞
係助詞
サ行変格活用「す」の未然形
推量の助動詞「む」の連体形
格助詞
優れラ行四段活用「優る」の已然形または命令形
存続の助動詞「り」の連体形
宝子
格助詞
しかカ行四段活用「しく」の未然形
推量の助動詞「む」の已然形
やも係助詞



著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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