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5_80 世界の様々な地域 / 各国の名称と位置・大陸

「キューバ共和国」について調べてみよう

著者名: 早稲男
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キューバ共和国

キューバ共和国(以下「キューバ」、英語ではRepublic of Cuba)は、カリブ海に位置する共和制国家です。首都はハバナです。

このテキストでは、キューバの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。


1.国土:カリブ海の緑豊かな大島

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キューバ共和国は、カリブ海、メキシコ湾、大西洋が交わる戦略的な位置にあります。国土は東西に長く伸びるキューバ本島を中心に、フベントゥド島(Isla de la Juventud)やカヨ・ココ(Cayo Coco)、カヨ・ラルゴ(Cayo Largo)など、大小合わせて約4,000もの島々や岩礁から構成されています。

国土総面積は約11万860平方キロメートルで、これは日本の本州の約半分に相当します。国土の大部分は比較的平坦な平野や丘陵地ですが、東部のシエラ・マエストラ山脈には、キューバ最高峰のトゥルキーノ山(Pico Turquino、標高1,974m)がそびえています。

気候は熱帯サバナ気候に属し、年間の平均気温は摂氏25度前後と温暖です。大きく分けて乾季(11月~4月)と雨季(5月~10月)がありますが、一年を通して観光に適しています。特に乾季は湿度が低く過ごしやすい時期です。豊かな自然にも恵まれており、多様な動植物が生息する国立公園や、美しいサンゴ礁が広がる海域は、環境保護の観点からも重要視されています。ビニャーレス渓谷(Valle de Viñales)のようなユニークなカルスト地形は、ユネスコの世界遺産にも登録されています。


2.人口と人種:多様なルーツが織りなす社会

キューバの総人口は、約1,108万人(CIA World Factbook, 2024年推定)です。人口の約77%が都市部に居住しており、首都ハバナには約214万人が暮らしています。

キューバ社会の大きな特徴は、その多様な人種構成にあります。歴史的に、先住民、スペインからの植民者、そして労働力として連れてこられたアフリカ系の人々が混ざり合ってきました。CIA World Factbook(2012年国勢調査データに基づく推定)によると、人種構成は白人系が約64.1%、混血(メスティーソ/ムラート)が約26.6%、アフリカ系が約9.3%とされています。しかし、これは自己申告に基づく分類であり、実際には人々の間にはより複雑で多様な混血が進んでいます。この多様なルーツが、キューバの文化、特に音楽や宗教に豊かな彩りを与えています。


3.言語:キューバの響きを持つスペイン語

キューバの公用語はスペイン語です。植民地時代の歴史を反映し、広く国民の間で話されています。しかし、キューバで話されるスペイン語は、他のスペイン語圏とは異なる独自の発音や語彙、表現を持っています。特に、語尾の子音を発音しなかったり、独特のスラングが用いられたりするのが特徴です。カリブ海地域の他の国々とも共通する、リズミカルで早口な話し方も耳にするでしょう。

観光地やホテルなどでは、英語を話すスタッフも増えていますが、基本的なスペイン語の挨拶やフレーズを知っていると、現地の人々とのコミュニケーションがより円滑になり、旅が一層豊かなものになります。キューバの人々は親しみやすく、片言のスペイン語でも温かく応じてくれることが多いです。


4.主な産業:伝統と革新が交差する経済

キューバ経済は、歴史的に砂糖とタバコ(特に高品質な葉巻)の生産・輸出に大きく依存してきました。これらの農産物は、今でもキューバの重要な輸出品目です。また、ニッケル鉱石の埋蔵量も豊富で、鉱業も主要産業の一つとなっています。

近年、キューバ経済の柱として重要性を増しているのが、サービス業、特に観光業と医療サービスです。美しいビーチ、歴史的な街並み、豊かな文化を求めて、世界中から多くの観光客が訪れます(新型コロナウイルス感染症拡大前の2018年には約470万人の外国人観光客を受け入れました)。観光収入は、外貨獲得の重要な手段となっています。

また、キューバは質の高い医療制度を有しており、国民皆保険制度が敷かれています。さらに、多くの医師や医療専門家を中南米やアフリカ諸国などに派遣しており、「医療外交」とも呼ばれるこの取り組みは、国際貢献であると同時に、重要な外貨収入源にもなっています。

一方で、アメリカによる長年の経済制裁や、社会主義計画経済の課題、ハリケーンなどの自然災害の影響もあり、経済は依然として厳しい状況に直面しています。近年は、民間セクターの活動を部分的に認めるなどの経済改革も進められています


5.主な観光地:歴史、文化、自然の宝庫

キューバには、訪れる人々を魅了する多様な観光地があります。

ハバナ (Havana)

首都であり、最大の都市。スペイン植民地時代の壮麗な建築物が立ち並ぶ旧市街(Habana Vieja)は、その歴史的価値からユネスコ世界遺産に登録されています。エル・モロ要塞やカピトリオ(旧国会議事堂)、カテドラル・デ・サン・クリストバルなどの歴史的建造物、そして街中を走る色鮮やかなクラシックカーは、ハバナの象徴的な風景です。革命広場やヘミングウェイゆかりの地(ホテル・アンボス・ムンドス、フィンカ・ビヒアなど)も人気のスポットです。

バラデロ (Varadero)

キューバ随一のビーチリゾート。約20kmにわたって続く白砂のビーチと、透き通ったターコイズブルーの海は、「カリブ海の宝石」と称賛されています。高級ホテルやオールインクルーシブのリゾートが立ち並び、マリンスポーツやゴルフなどを楽しむことができます。

トリニダー (Trinidad)

16世紀に建設された植民都市で、その保存状態の良い街並みはハバナ旧市街と共に世界遺産に登録されています。石畳の道、カラフルな家々、マヨール広場(Plaza Mayor)などが、まるで時間が止まったかのようなノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。近郊のロス・インヘニオス渓谷(Valle de los Ingenios)も、かつての砂糖プランテーションの歴史を伝える世界遺産の一部です。

ビニャーレス渓谷 (Valle de Viñales)

キューバ西部に位置する、石灰岩の奇岩(モゴーテ)が点在する風光明媚な渓谷。タバコ栽培の中心地でもあり、伝統的な農法を見学したり、葉巻農家を訪れたりすることができます。このユニークな文化的景観も世界遺産に登録されています。

サンティアゴ・デ・クーバ (Santiago de Cuba)

キューバ第二の都市で、「カリブ海の首都」とも呼ばれます。キューバ革命発祥の地としても知られ、モンカダ兵営跡などの史跡があります。音楽とダンスが盛んな街としても有名で、アフリカ系の文化の影響を色濃く感じることができます。

これらの他にも、シエンフエゴス(Cienfuegos)のフランス風建築群(世界遺産)、カマグエイ(Camagüey)の迷路のような旧市街(世界遺産)、サンタ・クララ(Santa Clara)のチェ・ゲバラ霊廟など、キューバ全土に見どころが点在しています。


6.文化:情熱的なリズムと創造性の融合

キューバ文化の根幹には、スペイン、アフリカ、そしてカリブの要素が融合して生まれた独自のアイデンティティがあります。

音楽とダンス

キューバは「音楽の島」として世界的に有名です。ソン(Son Cubano)、サルサ(Salsa)、ルンバ(Rumba)、マンボ(Mambo)、チャチャチャ(Cha-cha-cha)など、数々の情熱的なリズムがこの島で生まれ、世界中に広まりました。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の成功は、キューバ音楽の魅力を改めて世界に示しました。街角やライブハウス(Casa de la Músicaなど)では、日常的に音楽とダンスが溢れています。

文学と美術

キューバは多くの著名な作家や芸術家を輩出してきました。詩人のホセ・マルティは国民的英雄であり、作家のアレホ・カルペンティエルや、アメリカ出身ながらキューバを愛したアーネスト・ヘミングウェイも有名です。美術では、ウィフレド・ラムのような国際的に評価される画家がいます。ハバナの国立美術館(Museo Nacional de Bellas Artes)では、キューバ美術の豊かな歴史に触れることができます。

映画

キューバ映画も国際的に高い評価を受けており、特に社会問題を鋭く描いた作品が知られています。ハバナ国際ラテンアメリカ映画祭は、ラテンアメリカ映画の重要な祭典の一つです。

宗教

国民の多くはカトリックを信仰していますが、アフリカから伝わったヨルバ族の信仰とカトリックが融合した「サンテリア(Santería)」と呼ばれる民間信仰も広く根付いています。これはキューバ文化の多様性を示す象徴的な例です。

葉巻とラム酒

キューバを代表する嗜好品である葉巻(Habanos)とラム酒(Ron Cubano)も、文化の一部として深く根付いています。世界最高品質とされるキューバ産葉巻の製造工程や、ラム酒博物館などを訪れるのも興味深い体験です。


7.スポーツ:野球は国民の魂

キューバにおいて、スポーツは国民生活に欠かせない要素であり、特に野球(スペイン語でペロタ "Pelota")は圧倒的な人気を誇ります。国技ともいえる野球は、単なるスポーツを超え、国民の情熱とアイデンティティの一部となっています。国内リーグ(Serie Nacional de Béisbol)は高いレベルを誇り、多くの才能ある選手を輩出してきました。オリンピックやワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会では、常に強豪国として注目を集め、数々の輝かしい実績を残しています。

野球以外では、ボクシングもキューバの得意とするスポーツです。オリンピックでは数多くの金メダルを獲得しており、世界的に有名なボクサーを輩出しています。その他、バレーボール、陸上競技なども盛んです。スポーツを通じた健康増進や青少年の育成にも力が入れられています。


8.日本との関係:長く友好的な交流の歴史

日本とキューバ共和国は、1929年に外交関係を樹立して以来、長年にわたり友好的な関係を築いてきました。第二次世界大戦による中断はありましたが、1957年に外交関係が再開され、現在に至るまで良好な関係が続いています。

経済協力

経済面では、日本はキューバに対し、経済協力(特に無償資金協力や技術協力)を行ってきました。医療機材の整備や、農業分野での協力などがその例です。貿易関係においては、日本はキューバからコーヒー豆、魚介類、葉巻などを輸入し、キューバへは機械類や自動車などを輸出しています。

文化交流

文化交流も活発に行われています。キューバの音楽やダンスは日本でも人気が高く、多くのキューバ人アーティストが来日公演を行っています。また、日本の伝統文化やポップカルチャーもキューバで紹介されています。スポーツ分野では、特に野球を通じた交流が盛んです。日本のプロ野球で活躍したキューバ人選手も多く、両国の野球ファンにとって交流は身近なものとなっています。

近年では、学術交流や人的交流も進んでいます。在留邦人数は約120人(2023年10月時点,外務省)、在日キューバ人数は約360人(2023年6月時点,出入国在留管理庁)となっており、両国民間の相互理解も少しずつ深まっています。
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CIA World Factbook
世界銀行 (World Bank)
外務省
キューバ政府観光局

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