西ヨーロッパの中世文化で押さえておきたいポイント
※赤字部分が問題に出そうな部分です。赤色の暗記シートなどで隠して見てください。
西ヨーロッパ中世文化の特徴
・西ヨーロッパの中世文化は、
キリスト教をもとにした宗教が中心の文化であったと言える。ローマ人の言語
ラテン語は、のちに俗化して
フランス語・スペイン語・イタリア語となっていったが、カトリック教会では重要な
学術言語として使用され続けた。
アンティオキアの教父
ヒエロニムスにより聖書がギリシア語やヘブライ語から
ラテン語に翻訳されると、ラテン語訳聖書は
ヴルガータと呼ばれカトリックの標準聖書となった。
・また、中世の時代にはイベリア半島の
トレドやシチリア島の
パレルモなど、イスラーム社会との接点だった場所を通じて、イスラーム文化がラテン語訳され、ヨーロッパにもたらされた。古代ギリシアの哲学や数学もイスラーム文化を介してヨーロッパに流入し、中世の学問の体系化に大きな影響を与えた。
キリスト教神学とスコラ学の発達
・西ヨーロッパのキリスト教世界では、「
哲学は神学のはしため」ということわざがあった。キリスト教の信仰を研究する
神学はあらゆる学問の中でも最上位であると考えられ、アウグスティヌスにより大成された思想を元に、中世では
スコラ学(スコラ哲学)が発展した。
・スコラは学校(school)という意味であり、
フランク王国の
カール大帝が都
アーヘンの宮廷や教会を中心に学校を建設し、イングランドから高名な
アルクィンなどの神学者を招聘して学問を奨励したことが始まりである。これを
カロリング=ルネサンスといい、『
カール大帝伝』を著した
アインハルトなど、さまざまな学者が活躍し、
カロリング小字体が発達した。
・
スコラ学(スコラ哲学)は、キリスト教の教理に、
アリストテレスに代表される
ギリシア哲学が合わさり、体系化した神学・哲学である。11世紀にカンタベリ大司教の
アンセルムスの研究を経て13世紀に『
神学大全』を著したイタリアの神学者
トマス=アクィナスによって大成した。
・スコラ学には
普遍論争という長年の課題があった。
アンセルムスが主張した
実在論(神や普遍の観念は、事物に専攻して存在するという説)と、
アベラールなどが主張した
唯名論(名目論ともいい、実在するのは個々の事物であり、神や普遍は抽象にすぎないという説)が対立していた。トマス=アクィナスは、ゆるやかな実在論の立場をとりながら、信仰と理性の統一を図り、神学と哲学を普遍論争は一応決着した。
・しかし、普遍論争の決着後、イギリスの神学者
ドゥンス=スコトゥスや
ウィリアム=オブ=オッカムが哲学と神学の分離を主張し、スコラ学は衰退していった。その後、信仰と理性、神学と哲学は区別されるようになり、神学者
ロジャー=ベーコンなどにより、近代自然科学への方法論が開かれていった。
中世ヨーロッパの大学の成立
・中世の教会や修道院には、神学の研究機関として教会法やローマ法を研究する大学が付属機関として成立した。以下が、著名な中世の大学である。
ボローニャ大学 | 北イタリアに成立したヨーロッパ最古の大学。法学が著名。 |
サレルノ大学 | 南イタリアに成立した中世最古の大学の一つ。医学が著名。 |
パリ大学 | ノートルダム大聖堂の付属神学校として成立。神学の最高権威。 |
オクスフォード大学 | パリ大学を模範に成立。イギリス神学の中心。 |
ケンブリッジ大学 | オクスフォード大学の教師・学生が分離独立して成立。 |
・中世の大学は、
神学・法学・医学・哲学の4学部を有し、
文法・修辞・弁証法の下級3学、
算術・幾何・天文・音楽の上級4学が一般教養科目として教えられた。
美術・文学
・美術の分野では、キリスト教の
教会建築や、それを彩る
ステンドグラスなどが発達した。中世ヨーロッパの芸術様式は、以下のように分けられる。
ビザンツ様式 | 円屋根とモザイクが特徴的。聖ソフィア聖堂など。 |
ロマネスク様式 | 半円形アーチとフレスコ画が特徴。ピサ(伊)・ヴォルムス(独)・マインツ大聖堂(独)、クリュニー修道院(仏)など。 |
ゴシック様式 | 12世紀フランスでおこり、尖頭アーチとステンドグラスが特徴。ノートルダム(仏)・アミアン(仏)・シャルトル(仏)・ケルン(独)・カンタベリ大聖堂(英)など。 |
・中世文学では、騎士を主題としたフランスの『
ローランの歌』や、イギリスの『
アーサー王物語』など
騎士道物語が成立し、ドイツでは『
ニーベルンゲンの指環』など、
民族叙事詩が完成した。これ以外にも、騎士と婦人の恋愛を歌った
叙情詩が生まれ、
トゥルバドゥールや
ミンネジンガーといわれた吟遊詩人によって語り継がれた。
・このように、さまざまな分野で中世文化が発展したことを
12世紀ルネサンスと呼ぶ。