このテキストでは、百人一首に収録されている歌「君がため惜しからざりし命さへながくもがなと思ひけるかな」の現代語訳・口語訳と解説（句切れの有無など）、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、後拾遺和歌集にも収録されています。




百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、１人につき１首ずつ選んで作られています。


君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな


きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな




（あなたと逢うまでは）あなたのためなら惜しくはないと思っていた命ですが、（逢ったあとは、少しでも一緒にいられるように）長くあってほしいと思うようになりました。


この歌の詠み手は、藤原義孝（ふじわら　の　よしたか）です。天然痘により２１歳の若さで死去しました。子に三蹟の１人、藤原行成がいます。

詞書によると、恋する女性と初めて夜を過ごした翌日に詠んだ後朝（きぬぎぬ）の歌です。恋が実ったことにより生まれた心境の変化がストレートに表現されています。

もがな	願望の終助詞。「～があったらなぁ、～であってくれたらなぁ」などと訳す。形容詞の連用形、格助詞などにつく。

句切れなし。


※名詞は省略しています。

君	ー
が	格助詞
ため	ー
惜しから	シク活用の形容詞「をし」の未然形
ざり	打消の助動詞「ず」の連用形
し	過去の助動詞「き」の連体形
命	ー
さへ	副助詞
ながく	ク活用の形容詞「ながし」の連用形
もがな	願望の終助詞
と	格助詞
思ひ	ハ行四段活用「おもふ」の連用形
ける	詠嘆の助動詞「けり」の連体形
かな	詠嘆の終助詞

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に１０００年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月（にうゎんがつ）」や「月日は百代の過客（くゎかく）にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。