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百人一首1『秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ』現代語訳と解説(掛詞・品詞分解など)
著作名: 走るメロス
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百人一首(1)天智天皇/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ


このテキストでは、(小倉)百人一首に収録されている歌「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわがころも手は露に濡れつつ」の現代語訳・口語訳と解説(掛詞、句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。百人一首の他に、後撰集にも収録されています。



百人一首とは

百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。


暗記に役立つ百人一首一覧

以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。

暗記に役立つ百人一首一覧


原文

秋の田の (※1)かりほの庵の (※2)苫(※3)あら 我が衣手は 露に濡れつつ


ひらがなでの読み方

あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ



現代語訳

秋の稲田に作られた仮小屋で過ごしていると、屋根の覆いが粗いので、私の袖はしきりに夜露で濡れることです。


解説・鑑賞のしかた

「秋田刈る仮庵を作りわが居れば衣手寒く露ぞ置きにける」(万葉集/詠み人知らず)を基にしたものと言われていますが、百人一首では、天智天皇が農民の苦労をいたわって詠んだ歌として選ばれています。この時代であっても、天皇が田んぼの仮小屋の中で一人時間を過ごしているとは考えにくいですので、天智天皇が農民の気持ちを思いやる理想的な天皇だというのを印象づけたい意図があったのだと思われます。

ちなみに百人一首の第一首と第二首は、天智天皇・持統天皇の親子が詠んだ歌です。そして第九十九首と第百首は、後鳥羽院・順徳院の親子が詠んだ歌です。ここにも選者藤原定家の何かしらの意図があったと考えられます。



単語・文法解説

単語

(※2)苫菅(すげ)や茅(かや)を粗く編んで作られた小屋や舟の覆い
(※3)あらみク活用の形容詞「あらし」の語幹+原因・理由を表す接尾語「み」



(※1)掛詞

「かりほ」は、「仮庵」と「刈り穂」の掛詞。


句切れ

句切れなし。


品詞分解

※名詞は省略しています。



格助詞
格助詞
かりほ
格助詞
格助詞
間投助詞
あらク活用の形容詞「あらし」の語幹
接尾語
代名詞
格助詞
衣手
係助詞
格助詞
濡れラ行下二段活用「ぬる」の連用形
つつ接続助詞



著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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