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古文単語「きこえさす/聞こえさす」の意味・解説【サ行下二段活用】 |
著作名:
走るメロス
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きこえさす/聞こえさす
このテキストでは、サ行下二段活用の動詞「きこえさす/聞こえさす」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「きこえさす」には
①サ行四段活用「聞こえ止す」(「言ひ止す」の謙譲語)
②サ行下二段活用「聞こえさす」
③ヤ行下二段活用「聞こゆ」+使役の助動詞「さす」
などの活用があるが、ここでは「②サ行下二段活用」を扱う。
サ行下二段活用
未然形 | きこえさせ |
連用形 | きこえさせ |
終止形 | きこえさす |
連体形 | きこえさする |
已然形 | きこえさすれ |
命令形 | きこえさせよ |
■意味1:他動詞
(「言ふ」の謙譲語で)
申し上げる。
[出典]:道真の左遷 大鏡
「 つれづれに籠もらせたまへらむほど、何とはべらぬ昔物語も、 参りて、聞こえさせむと思うたまへれど...」
[訳]:所在なくお引き籠もりになっていらっしゃる間、何ということもございません昔話でも、参上して、申し上げようと存じますが...
「 つれづれに籠もらせたまへらむほど、何とはべらぬ昔物語も、 参りて、聞こえさせむと思うたまへれど...」
[訳]:所在なくお引き籠もりになっていらっしゃる間、何ということもございません昔話でも、参上して、申し上げようと存じますが...
■意味2:他動詞
(手紙などを)差し上げる。
[出典]:さしたる事なくて 徒然草
「文も、『久しく聞えさせねば。』などばかり言ひおこせたる、いとうれし。」
[訳]:手紙も、「長いこと差し上げないので。」などぐらいに言ってこちらによこしたのは、本当に嬉しいことです。
「文も、『久しく聞えさせねば。』などばかり言ひおこせたる、いとうれし。」
[訳]:手紙も、「長いこと差し上げないので。」などぐらいに言ってこちらによこしたのは、本当に嬉しいことです。
■意味3:補助動詞
(動詞及び特定の助動詞の連用形について)
お〜申し上げる。
[出典]:行幸 源氏物語
「今年となりては、頼み少なきやうにおぼえはべれば、今一度、かく見たてまつりきこえさすることもなくてやと、心細く思ひたまへつるを...」
[訳]:今年となっては、長く生きられそうにないように思われますので、もう一度、このようにお目にかかり申し上げることもないのではなかろうかと、心細く存じておりましたが...
「今年となりては、頼み少なきやうにおぼえはべれば、今一度、かく見たてまつりきこえさすることもなくてやと、心細く思ひたまへつるを...」
[訳]:今年となっては、長く生きられそうにないように思われますので、もう一度、このようにお目にかかり申し上げることもないのではなかろうかと、心細く存じておりましたが...
「聞こゆ」と「聞こえさす」
「聞こえさす」はヤ行下二段活用「聞こゆ」の未然形と使役の助動詞「さす」が一語になったものと考えられる。このテキストで扱った「聞こえさす」は、一語化して使役「さす」の意味が失われているが、「聞こゆ」と「さす」がそれぞれ独立して使役の意味が残っている場合もある。その場合は「申し上げさせる」と訳す。
ちなみに「聞こゆ」と「聞こえさす」とでは、「聞こえさす」のほうが敬意が高い。
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