|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
平家物語原文全集「少将乞請 4」 |
著作名:
古典愛好家
13,320 views |
平家物語
少将乞請
季貞帰り参って、この由宰相殿に申しければ、誠本意なげにて、重ねて申されけるは、
「保元・平治よりこのかた、度々の合戦にも、御命には代はり参らせんとこそ存じ候へ。この後も、荒き風をば、まづ防ぎ参らせ候はんずるに、たとひ教盛こそ年老いて候ふとも、若き子共あまた候へば、一方の御固めには、などかならでは候ふべき。それに成経しばらくあづからうど申すを、御許されなきは、教盛を一向二心ある者と思し召すにこそ。これほどうしろめたう思はれ参らせては、世にあっても何にかはし候べき。今はただ身のいとまを給はって出家入道し、片山里にこもり居て、一筋に後世菩提のつとめを営み候はん。由なき浮世のまじはりなり。世にあればこそ望みもあれ。望みのかなはねばこそ恨みもあれ。しかじ、浮世をいとひ、実の道に入りなんには」
とぞのたまひける。季貞参って、
「宰相殿ははや思し召し切って候ふ。ともかうもよきやうに、御はからひ候へ」
と申しければ、その時入道大きに驚ゐて、「さればとて、出家入道までは、あまりにけしからず。その儀ならば、少将をばしばらく御辺に預く奉ると云ふべし」
とこそのたまひけれ。季貞帰り参って宰相殿にこの由申せば、
「あはれ、人の子をば持つまじかりけるものかな。我が子の縁に結ぼほれざらんには、これほどまで心をばくだかじものを」
とて出でられけり。
つづき
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
平家物語原文全集「少将乞請 3」
>
平家物語原文全集「少将乞請 5」
>
平家物語原文全集「御輿振 2」
>
枕草子 原文全集「円融院の御はてのとし」
>
枕草子 原文全集「むかしおぼえて」
>
枕草子 原文全集「正月一日、三月三日は」
>
蜻蛉日記原文全集「例のほどにものしたれど」
>
最近見たテキスト
平家物語原文全集「少将乞請 4」
10分前以内
|
>
|