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平家物語原文全集「殿下乗合 3」
著作名: 古典愛好家
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平家物語

殿下乗合

資盛(すけもり)朝臣(あそん)はふはふ六波羅へおはして、祖父の相国禅門に、この由うっへ申されければ、入道大きに怒って、

「たとひ殿下なりとも、浄海があたりをば、憚(はばか)り給ふべきに、幼き者に、左右なく恥辱を与へられけるこそ、遺恨の次第なれ。かかる事よりして、人にはあざむかるるぞ。この事思ひ知らせ奉らでは、えこそあるまじけれ。殿下を恨み奉らばや」


とのたまへば、重盛卿申されけるは、

「これは少しも苦しう候ふまじ。頼政・光基なんど申す源氏共にあざむかれて候はんには、まことに一門の恥辱でも候ふべし。重盛が子どもとて候はんずる者の、殿の御出に参りあひて、乗り物よりおり候はぬこそ、尾籠(びろう)に候へ」


とて、その時事にあふたる侍ども召し寄せ、

「自今以後も、汝等よくよく心得(う)べし。あやまって殿下へ無礼の由を申さばやとこそ思へ」


とて、帰られけり。


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