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蜻蛉日記原文全集「かくて今しばしもあらばやと思へど」 |
著作名:
古典愛好家
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蜻蛉日記
かくて今しばしもあらばやと思へど
かくて、今しばしもあらばやと思へど、明くればののしりて出だし立つ。かへさは、しのぶれどここかしこあるじしつつとどむれば、ものさわがしうてすぎゆく。三日といふに京につきぬべけれど、いたう暮れぬとて、山城の国、久世(くぜ)の屯倉(みやけ)といふところにとまりぬ。いみじうむづかしけれど、夜に入りぬれば、ただ明くるをまつ。
まだ暗きよりいけば、黒みたる者の調度おひてはしらせて来(く)。ややとほくより下りて、ついひざまづきたり。見れば、随身(ずゐじん)なりけり。
「なにぞ」
とこれかれ問へば、
「きのふの酉(とり)のときばかりに宇治の院におはしましつきて、「かへらせ給ひぬやと、まゐれ」と、おほせごとはべりつればなん」
といふ。さきなる男ども、
「とう促せや」
などおこなふ。宇治の川によるほど、霧は来しかた見えず立ちわたりて、いとおぼつかなし。車かきおろして、こちたくとかくするほどに、人声おほくて、
「御車おろし立てよ」
とののしる。霧の下より、例の網代(あじろ)も見えたり。いふかたなくをかし。みづからは、あなたにあるなるべし。まづ、かくか書きてわたす。
人ごころうぢのあじろにたまさかに よるひをだにもたづねけるかな
舟の岸にきよするほどに、かへし、
かへるひを心のうちにかぞへつつ たれによりてかあじろをもとふ
見るほどに、車かきすゑて、ののしりてさしわたす。いとやんごとなきにはあらねど、いやしからぬ家の子ども、何のぞうの君などいふものども、轅(ながえ)、鴟尾(とみのお)のなかに入りこみて、日の脚のわづかに見えて、霧ところどころにはれゆく。あなたの岸に家の子、衛府の住(すけ)など、かいつれてみおこせたり。中に立てる人も、旅立ちて狩衣なり。岸のいとたかきところに舟をよせて、わりなうただあげにになひあぐ。轅(ながえ)を板敷にひきかけて立てたり。
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