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蜻蛉日記原文全集「よべみせし文」 |
著作名:
古典愛好家
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蜻蛉日記
よべみせし文
よべみせし文、枕上(まくらがみ)にあるをみれば、わが取り破(や)るとおもひしところは異にて、又破(や)れたるところあるはあやしとぞ思へば、かのかへりごとせしに、
「いかなる駒か」
とありしことの、とかく書きつけたりしを、破(や)り取りたるなべし。まだしきに助のもとに、
「みだり風おこりてなん、きこえしやうには、えまゐらぬ。ここに午(うま)時許(ばかり)におはしませ」
とあり。例のなにごとにもあらじとてものせぬほどに、文あり。それには、
「例よりもいそぎきこえさせんとしつるを、いとつつみ思ひたまふることありてなん。よべの御ふみをわりなく見給へがたくてなん。わざときこえさせ給はんことこそかたからめ、をりをりにはよろしかべいさまにとたのみきこえさせながら、はかなき身のほどをいかにとあはれに思ふたまふる」
など、例よりもひきつくろひて、らうたげに書いたり。かへりごとは、ようなくつねにしもとおもひて、せずなりぬ。
又の日、なほいとほし、若やかなるさまにもありとおもひて、
「昨日は人の物忌み侍りしに、日くれてなん、
「心あるとや」
といふらんやうにおもふたまへし。をりをりにはいかでと思ひ給ふるを、ついでなき身になり侍りてこそ。心うげなる御はしがきをなん、げにと思ひきこえさせ侍るや。紙の色は昼もやおぼつかなうおぼさるらん」
「心あるとや」
といふらんやうにおもふたまへし。をりをりにはいかでと思ひ給ふるを、ついでなき身になり侍りてこそ。心うげなる御はしがきをなん、げにと思ひきこえさせ侍るや。紙の色は昼もやおぼつかなうおぼさるらん」
とて、これよりぞものしたりけるをりに、法師ばらあまたありてさはがしげなりければ、さしおきて来(き)にけり。
まだしきにかれより、
「さまかはりたる人々ものし侍りしに、日もくれてなん、使ひもまゐりにける。
なげきつつあかしくらせばほととぎす みのうのはなのかげになきつつ
いかにし侍らん、こよひはかしこまり」
なげきつつあかしくらせばほととぎす みのうのはなのかげになきつつ
いかにし侍らん、こよひはかしこまり」
とさへあり。かへりごとは、
「昨日かへりにこそはべりけめ。なにかさまではとあやしく、
かげにしもなどかなくらんうの花のえだにしのばぬこころとぞきく」
かげにしもなどかなくらんうの花のえだにしのばぬこころとぞきく」
とて、うへかい消ちて、はしに
「かたはなる心ちし侍りや」
と書いたり。
そのほどに、
「左京のかみうせ給ひぬ」
とものすべかめるうちにも、つつしみふかうて山寺になどしげうて、ときどきおどろかして六月(みなづき)もはてぬ。
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