更新日時:
|
|
枕草子 原文全集「三月ばかり」 |
|
著作名:
古典愛好家
14,258 views |
三月ばかり物忌(ものいみ)しにとて、かりそめなる所に、人の家に行きたれば、木どもなどのはかばかしからぬ中に、柳といひて、例のやうになまめかしはあらず、ひろく見えてにくげなるを、あらぬものなめりといへど、かかるもありなどいふに、
さかしらに柳のまゆのひろごりて はるのおもてをふする宿かな
とこそ見ゆれ。
そのころ、またおなじ物忌しに、さやうの所に出でくるに、二日といふ日の昼つかた、いとつれづれまさりて、ただ今もまゐりぬべき心地するほどしも、仰せごとのあれば、いとうれしくて見る。浅緑の紙に、宰相の君、いとをかしげに書い給へり。
いかにして過ぎにしかたを過ぐしけむ くらしわづらふ昨日今日かな
となむ。私には、
「今日しも千年の心地するに、あかつきにはとく」
とあり。この君ののたまひたらむだにをかしかべきに、まして仰せごとのさまはおろかならぬ心地すれば、
雲の上もくらしかねける春の日を所がらともながめつるかな
私には、
「今宵のほども少将にやなり侍らむとすらむ」
とて、暁にまゐりたれば、
「昨日の返し、『かねける』いとにくし。いみじうそしりき」
と仰せらる、いとわびしう、まことにさることなり。
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
枕草子 原文全集「雪のいと高う降りたるを/陰陽師のもとなる」
>
枕草子 原文全集「十二月廿四日」
>
平家物語原文全集「殿下乗合 4」
>
蜻蛉日記原文全集「ついたちの日をさなき人をよびて」
>
平家物語原文全集「座主流 2」
>
枕草子 原文全集「大路近なる所にて聞けば」
>
平家物語原文全集「俊寛沙汰・鵜川軍 1」
>
最近見たテキスト
枕草子 原文全集「三月ばかり」
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング