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枕草子 原文全集「かしこき物は」 |
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著作名:
古典愛好家
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かしこき物は、乳母(めのと)のをとここそあれ。帝、親王(みこ)たちなどは、さるものにて、をきたてまつりつ。そのつぎつぎ、受領の家などにも、所につけたるおぼえ、わづらはしきものにしたれば、したり顔に、わが心地もいとよせありて、このやしなひたる子をも、むげにわがものになして、女はされどあり、男児(をのこご)はつとたちそひてうしろみ、いささかもかの御ことにたがふものをば、つめたて、讒言(ざうげん)し、あしけれど、これが世をば心にまかせていふ人もなければ、ところえいみじき面持ちして、ことおこなひなどす。
むげにをさなきほどぞすこし人わろき。親の前にふすれば、ひとり局に臥したり。さりとてほかへいけば、こと心ありとてさわがれぬべし。しゐてよびおろしてふしたるに、
「まづまづ」
とよばるれば、冬の夜などひきさがしひきさがしのぼりぬるが、いとわびしきなり。それは、よき所もおなじこと、いますこしわづらはしきことのみこそあれ。
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