バングラデシュ人民共和国
バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」、英語ではPeople's Republic of Bangladesh)は、南アジアに位置する共和制国家です。首都はダッカです。
このテキストでは、バングラデシュの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。
1. 国土
バングラデシュは、南アジアに位置する共和制の国家です。国土面積は約14万7,610平方キロメートルで、日本の本州よりわずかに小さい程度の広さです。インドとミャンマーに国境を接しており、南側はベンガル湾に面しています。国土の大部分はガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川という三つの大河によって形成されたデルタ地帯に属しています。このため、国土は非常に平坦で、広大な沖積平野が広がっています。
この地理的特徴から、バングラデシュは「河川の国」として知られています。国土を網の目のように流れる大小さまざまな河川は、交通や農業にとって重要な役割を果たしています。また、肥沃な土地は農業生産に有利な一方で、モンスーン期には頻繁な洪水にさらされることもあります。
南部のベンガル湾岸には、世界最大のマングローブ林であるシュンドルボン(Sundarbans)が広がっており、ユネスコの世界遺産にも登録されています。この地域はベンガルトラをはじめとする多様な野生生物の生息地となっています。
首都はダッカで、国の経済・政治の中心地です。沿岸部にはチッタゴン港という重要な港湾都市があり、国際貿易の拠点となっています。
2. 人口と人種
バングラデシュは世界で最も人口密度の高い国の一つです。2023年時点の推定人口は約1億7,295万人で、この人口の多さと狭い国土が、高い人口密度を生み出しています。
人種構成は、ベンガル人が人口の98%を占めており、民族的な同質性が非常に高いことが特徴です(2023年)。残りの2%は、チッタゴン丘陵地帯を中心に居住するチャクマ族やマルマ族などの様々な少数民族グループで構成されています。これらの少数民族は、独自の言語や文化、社会構造を持っています。
人口構成は若年層が多く、平均年齢は28.5歳(2023年)と非常に若いのが特徴です。これは、今後の労働力として大きな潜在力を持つ一方で、雇用創出や教育機会の確保といった課題も抱えていることを示しています。都市部への人口集中が加速しており、特に首都ダッカは世界有数のメガシティとして知られています。
3. 言語
バングラデシュの公用語はベンガル語です。ベンガル語はインドの西ベンガル州などでも話されており、世界で約2億5000万人以上の話者がいるとされています。ベンガル語はインド・ヨーロッパ語族に属し、独自の文字体系(ベンガル文字)を持っています。ベンガル文字は左から右へと書かれ、アルファベットとは異なる音節文字です。
言語には、その国の歴史や文化が色濃く反映されています。バングラデシュでは、1952年に起こった「ベンガル語国語化運動」という出来事が、ベンガル語の地位を確立する上で重要な役割を果たしました。これは、当時のパキスタン政府がウルドゥー語を唯一の国語と定めたことに対し、ベンガル語話者たちが母語を守るために抗議した運動です。この運動はバングラデシュの独立へとつながるナショナリズムの源流の一つとなり、この出来事を記念して、2月21日は国際母語デーとして国連によって制定されました。
少数民族はそれぞれ独自の言語を持っていますが、教育や公の場ではベンガル語が使われることが一般的です。ビジネスや高等教育の分野では英語も広く使用されており、特に都市部や若年層の間では英語能力が高い人も増えています。
4. 主な産業
バングラデシュ経済は、長年にわたり農業が中心でしたが、近年では産業構造が大きく変化しています。世界銀行のデータ(2023年)によると、GDPに占める産業別の割合は、サービス業が約50%、工業が約35%、農業が約15%となっています。
主要な産業は以下の通りです。
■衣料品製造業(既製服・RMG)
バングラデシュの経済を牽引する最も重要な産業です。世界銀行のデータ(2023年)によると、輸出総額の8割以上を占めています。低コストで高品質な製品を生産できるため、世界中のアパレルブランドの生産拠点となっています。特にニット製品やコットン製品の製造が盛んです。この産業は多くの雇用を生み出し、特に女性の社会進出に大きく貢献しています。
■農業
国土の大部分が平坦で肥沃な土地であるため、農業は依然として重要な産業です。コメが主要な作物であり、その他にはジュート(麻)、お茶、サトウキビ、野菜などが栽培されています。ジュートは、かつては「黄金の繊維」と呼ばれ、国の主要な輸出品でした。
■サービス業
近年、経済の成長とともにサービス業が拡大しています。特に、情報通信技術(ICT)分野は成長著しい分野の一つです。ソフトウェア開発やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスが注目されており、若い人口を活用したIT産業の発展が期待されています。その他、卸売・小売業、運輸・通信業、金融サービスも経済の重要な部分を占めています。
5. 主な観光地
バングラデシュは、豊かな自然、歴史的な史跡、独特の文化を持つ魅力的な観光地が点在しています。
■コックスバザール(Cox's Bazar)
世界で最も長い自然の砂浜を持つビーチとして知られています。その長さは約120キロメートルに及び、ベンガル湾の美しい景色を楽しむことができます。
■シュンドルボン(Sundarbans)
世界最大のマングローブ林であり、ユネスコ世界遺産にも登録されています(UN公式サイト)。ベンガルトラ、クロコダイル、シカなど、様々な野生生物の生息地であり、生態系が豊かです。ボートツアーで密林の奥深くを探検することができます。
■ラージシャヒ(Rajshahi)
「シルクの街」として知られており、高品質なシルク製品の生産地です。歴史的なイスラム建築やヒンドゥー寺院も多く残されています。
■バゲールハットのモスク都市(Historic Mosque City of Bagerhat)
ユネスコ世界遺産に登録されており、15世紀に建設された60ドーム・モスクをはじめとする数多くの歴史的なモスクが残されています。イスラム建築の美しさを堪能できる場所です。
■シレット(Sylhet)
お茶の産地として有名で、広大な茶畑が広がる美しい丘陵地帯です。緑豊かな景色や滝、多様な少数民族の文化に触れることができます。
6. 文化
バングラデシュの文化は、長きにわたる歴史の中で形成された豊かな多様性を持っています。
■文学と詩
ベンガル語は豊かな文学の伝統を持っています。特に、ノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴールは、ベンガル文学の黄金時代を築きました。彼の作品は、バングラデシュとインド西ベンガル州の両方で尊敬されており、バングラデシュの国歌も彼の詩が基になっています。
■祭り
宗教的な祭りが生活に深く根付いています。イスラム教徒にとって重要なイード・アル=フィトル(断食明け大祭)やイード・アル=アドハー(犠牲祭)のほか、ヒンドゥー教のドゥルガー・プージャなどが盛大に祝われます。
■食文化
コメと魚は、バングラデシュの食文化に不可欠な要素です。ベンガル湾や河川から豊富な種類の魚が獲れ、様々な調理法で楽しまれています。スパイスを豊富に使ったカレー料理も特徴的で、鶏肉、羊肉、野菜を使った多様なカレーがあります。ミシュティと呼ばれる甘いデザートも有名です。
■織物
ジャムダニ・サリーは、バングラデシュを代表する伝統的な織物です。繊細で複雑な手織りの模様が特徴で、ユネスコの無形文化遺産に登録されています(UN公式サイト)。また、ノクシカタと呼ばれる刺繡も伝統的な工芸品として知られています。
7. スポーツ
バングラデシュで最も人気のあるスポーツはクリケットです。老若男女を問わず、多くの人々が熱狂的に応援しています。
■クリケット
クリケットは国技とされており、国際試合が行われる際には国全体が熱狂に包まれます。バングラデシュ代表チームは「タイガース」という愛称で呼ばれ、国際クリケット評議会(ICC)のテストマッチ出場資格を持つ強豪国の一つです。国内には数多くのクリケット場があり、子供たちは空き地や公園で日常的にクリケットを楽しんでいます。
■サッカー
クリケットに次いで人気のあるスポーツです。特に地方では盛んで、多くの人がサッカーを楽しんでいます。
■カバディ
バングラデシュの国技に指定されているのはカバディです。これは、二つのチームに分かれて、一人の攻撃手が相手陣地に入り、息継ぎをせずに「カバディ、カバディ…」と唱えながら相手選手に触れることを試みる、という独特のルールを持つチームスポーツです。
8. 日本との関係
日本とバングラデシュは、長年にわたり友好的な関係を築いています。日本はバングラデシュの独立を承認した最初の国の一つであり、以来、様々な分野で協力関係を深めてきました。
■経済協力
日本はバングラデシュにとって最大の開発援助供与国の一つです。日本のODA(政府開発援助)は、交通インフラ(橋梁、道路、鉄道など)、電力、教育、医療といったバングラデシュの経済発展に不可欠な分野で重要な役割を果たしています。特に、マタバリ深海港やダッカ首都圏におけるMRT(都市高速鉄道)などの大規模インフラプロジェクトには、日本の技術と資金が活用されています。
■貿易関係
日本からバングラデシュへは、自動車部品や機械類などが輸出され、バングラデシュからは衣料品、皮革製品、ジュート製品などが日本に輸入されています。日本の大手企業もバングラデシュに進出し、ビジネス機会を拡大しています。
■人材交流
バングラデシュからは、多くの技能実習生や留学生が日本を訪れています。これにより、両国間の文化や技術の交流が促進されています。また、両国の政府や民間団体が、文化交流イベントなどを通じて相互理解を深める努力を続けています。
■政治的関係
両国は国際社会においても協力関係を維持しており、国連の場などでも意見交換が行われています。日本外務省のウェブサイトによると、両国の首脳や閣僚は定期的に会談を行い、二国間関係の強化について協議しています。