はじめに
このテキストでは、万葉集の第5巻に収録されている「
春の野に霧立ちわたり降る雪と人の見るまで梅の花散る」(八三九)の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。この和歌は、平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった万葉集『
梅花の歌三十二首并せて序』に収録された32首のうちのひとつです。
原文
春の野に 霧(※1)立ちわたり 降る雪と 人の(※2)見るまで 梅の花散る
ひらがなでの読み方
はるののに きりたちわたり ふるゆきと ひとのみるまで うめのはなちる
現代語訳
春の野に霧がたちこめて降る雪かと人が思うほど、梅の花が散ることです
解説
筑前目田氏真上(=田辺真上)作の歌です。大伴旅人主催の梅花の宴にて詠まれた32首のひとつです。梅花の宴とは文字通り梅の花を題材とした歌を詠む会で、当時太宰府の長官であった大伴旅人を中心に開催されました。そのときに詠まれた32首にはすべて梅の花が含まれています。
単語・文法解説
(※1)立ちわたり | ラ行四段活用「たちわたる」の連用形。「(霧などが)たちこめる」の意味 |
(※2)見る | マ行上一段活用「みる」の連体形。ここでは「おもう/判断する」と訳す |