生物学の参考書によれば、ヒト細胞の大きさは (神経細胞などは別) 直径5~20ミクロン程度、核はサイズの大きい細胞で8ミクロン、核の中にはDNAの構成単位ヌクレオチドの対が30億個も二重螺旋をなして入っている。また細胞質中には、エネルギー代謝を担うミトコンドリアが多い場合で2000個程度、DNA の情報を元にアミノ酸を繋いで蛋白質を作るリボソームが数百万個含まれており、他にもゴルジ体、ペルオキシソーム、リソソーム、小胞、膜様の構造物である小胞体、など様々なものが細胞質の中で機能しているそうです。
しかし参考書に載っている模式図を見るとミトコンドリアは5〜6個、リボソームも良くて数十個しか書き込んでありません。残りは推して知るべし... これでは想像力の乏しい私には、細胞内の様子がどうしても実感できません。そこで、「
時の流れが実感できる歴史年表」に様々な事件を伸び縮みしない時間目盛に沿って書き込んで、時の流れを実感した経験に基づき、今度は空間的に全てを同じ倍率100万倍で拡大してみました。即ち (以下のデータは主に南江堂『Essential 細胞生物学』による)、
細胞の直径:20ミクロン
核の直径:約8ミクロン
DNAの直径/長さ:2ナノメートル/約1m
ミトコンドリアの長さ:1~数ミクロン
リボソームの直径:約15ナノメートル
蛋白質の大多数は20種のアミノ酸が50~2000個繋がって折り畳まれた形で存在し、上記参考書p.150の図から大きさは3~20ナノメートル程度
細胞膜の厚さ:6~10ナノメートル
として、これらを100万倍に拡大すると、1ナノメートルは1ミリ、1ミクロンは1mになるので、
細胞の直径:20m
核の直径:8m
DNAの直径/長さ:2ミリ/1000キロ (直径8mのボール内に長さ千キロの糸が畳み込まれている)
ミトコンドリアの長さ:1~数m (実際には粒状のものから糸状のものまで色々)
リボソームの直径:15ミリ
蛋白質の大きさ:3~20ミリ程度
細胞膜の厚さ:6~10ミリ。
このように拡大してみると、細胞全体が直径20mのボールですから、直径15ミリのリボソームが数百万個泳いでいると言われても何となく想像できます。実際、直径15ミリのものを千個一列に並べれば太さ15ミリ、長さ15mの紐になりますから、縦横に百本ずつ即ち一万本並べても一辺 1.5メートルの底面を持つ高さ15メートルの角柱に入ります。それにしても、細胞にとって蛋白質の合成が如何に重要であるかが感じられます。
さてそれら全てを包み込む細胞膜の厚さは6~10ミリ。そんなに薄っぺらくて強化ビニールでもない膜で一体どうやって、水分をたっぷり含んだ直径20mに及ぶ物質をかかえ込んでいられるかと言えば、微小管、中間径フィラメント、アクチンフィラメントという三種類の線維が細胞骨格として内部を縦横に走っていて、全体の形を維持したり変形させているとのこと。その中で一番太い微小管 (外径の原寸約25ナノメートル) は中空の筒で、25ミリになります。
こういった様々な要素がしかるべき時にしかるべき手順に従って機能している、生命とは誠に驚異的な現象です。とりわけ、これだけ複雑な構造を持った細胞が分裂する時の内部の動きは、きっと壮観でしょう。そもそも、これだけの構造が肉眼では見えないようなサイズの細胞に組み込まれていること自体、気の遠くなるような話です。
考えてみると、目盛を一定に保って伸び縮みさせないという原理を適用出来るものは他にも色々あります:太陽系、銀河系、... 自分でやってみると意外な発見があるかも知れません。
詳しくは以下をご覧下さい:
http://sksrg.blog82.fc2.com/blog-entry-14.html