アッシリアによるオリエント統一
オリエントの統一は、セム語系の
アッシリアという帝国によって達成されます。
アッシリアは、紀元前2千年紀にメソポタミアに建国された国です。
守護神・首都の名である
アッシュールから、国名が付けられました。
アッシリアは、紀元前15世紀に、ミタンニ王国に一時的に服属しますが、その後独立を回復して、各地を征服し、紀元前670年エジプトを破り、オリエントを初めて統一します。
アッシリアの最盛期は、
アッシュール=バニパル(在位紀元前668~紀元前627)の時代で、新たに首都になった
ニネヴェに、
大図書館が建設されました。
(緑:アッシリアの最大版図)
アッシリアは世界帝国として繁栄しますが、征服地に対して過酷な支配を行ったことから各地の反乱が相次ぎ、紀元前612年、
新バビロニア(カルデア)と
メディアによって滅ぼされます。
四王国分立
アッシリアの滅亡とともにオリエントは再び分裂し、リディア、新バビロニア(カルデア)、メディア、エジプトの4つの王国が現れます。
国名 | 特徴 |
リディア | 小アジアに建国。世界初の鋳造貨幣を使用した。アケメネス朝キュロス2世によって滅亡。都:サルデス |
新バビロニア(カルデア) | アラム人の一派セム系カルデア人が建国。アケメネス朝キュロス2世によって滅亡。都:バビロン |
メディア | 印欧系イラン人が建国。アケメネス朝キュロス2世によって滅亡。都:エクバタナ |
エジプト | 第26王朝以降アッシリアから独立。アケメネス朝カンビュセス2世によって滅亡。 |
(四王国分立)
アケメネス朝ペルシアによる全オリエント統一
四王国分立の時代を終わらせたのが、
アケメネス朝ペルシアです。
ペルシアとは、イランの古い呼び名のことです。
ペルシア人たちは長い間メディアの支配下にありましたが、紀元前550年にアケメネス家の
キュロス2世(在位紀元前559~紀元前530)によってメディアが倒され、アケメネス朝ペルシアが建国されます。
キュロス2世はその後も征服活動を行い、紀元前546年リディアを、紀元前538年新バビロニアを滅ぼし、領土におさめます。
次の
カンビュセス2世(在位紀元前530~紀元前522)は、残るエジプトを征服し、
全オリエント統一を果たしました。
ダレイオス1世の治世
アケメネス朝第3代の
ダレイオス1世(在位紀元前522~紀元前486)の治世には、東はインダス川から、西はエーゲ海北岸に至る広大な帝国が成立します。
アケメネスの支配地域はインダス川までです。ガンジス川ではないので注意しましょう。
ダレイオス1世は広大な領土を支配するために、各地域を20ほどの州にわけ、各州に
サトラップという知事を置きました。
また、王直属の
王の目・王の耳という監察官が派遣され、各地のサトラップの不正や反乱がないか監督していました。
支配地域の交通にも力を入れ、アケメネス朝の首都
スサから、かつてのリディアの都
サルデスまで
王の道という軍道を建設し、
駅伝制を整備しました。
(アケメネス朝の最大版図 ピンク:王の道)
ダレイオス1世の治世では新都ペルセポリスの建設や、帝国内のさまざまな制度が確立し、アッシリアに比べ各地域に寛容な支配体制がとられたため、アケメネス朝は以後繁栄します。
アケメネス朝の滅亡
ダレイオス1世の時代に、ギリシアを侵略するための
ペルシア戦争がはじめられますが、次のクセルクセス1世(在位紀元前486~紀元前465)時代にギリシアに敗北すると、次第にアケメネス朝も衰退していきます。
ギリシア戦争敗北後もアケメネス朝は帝国を維持しますが、紀元前4世紀になると各地のサトラップが反乱をおこすようになり、マケドニアの
アレクサンドロス大王との
イッソスの戦い(紀元前333)・アルベロ(ガウガメラ)の戦い(紀元前331)で
ダレイオス3世(在位紀元前380~紀元前330)が破れると、アケメネス朝は滅亡しました。
(イッソスの戦い 左:アレクサンドロス 右:ダレイオス3世)
アケメネス朝の文化
アケメネス朝の文化の代表例が
ゾロアスター教です。
ゾロアスターという教祖が紀元前7世紀に始めた宗教で、善の神アフラ=マズダと悪の神アーリマンの対立から善悪二元論を教義とします。
ゾロアスター教は火を崇めたので拝火教とも言われ、
北魏時代の中国に伝わり
祆教(けんきょう)と呼ばれました。
ゾロアスター教の教義の一つである最後の審判は、ユダヤ教やキリスト教に影響を与えました。
また、ダレイオス1世が自らの即位の経緯とその正当性を主張する文章を刻んだ
ベヒストゥーン碑文がつくられました。
(ベヒストゥーン碑文)
これをもとに後世のドイツ人学者
グローテフェントが研究のきっかけを作り、その後イギリス人学者
ローリンソンが
楔形文字を解読します。
アケメネス朝の滅亡とともに、古代オリエントは終わり、アレクサンドロス大王の東方遠征をきっかけに
ヘレニズムという新しい時代がはじまります。