はじめに
前回のテキストでは、
化学平衡とはどのような現象か、そして化学平衡とは何かについて説明をしました。
化学平衡は、とある一定の原理「
ルシャトリエの原理」にのっとって移動をします。ここからは、
ルシャトリエの原理について3回にわけて説明をしていきます。
ルシャトリエの原理
P. W. Atkins 『アトキンス物理化学』上によると、ルシャトリエの原理とは
平衡状態にある反応系において、状態変数(温度、圧力(全圧)、反応に関与する物質の分圧や濃度)を変化させると、その変化を相殺する方向へ平衡は移動する。
と述べられています。つまり、
温度、圧力、そして濃度が変化すると、その化学平衡は移動するというわけです。ここではそのうち濃度について説明をします。
濃度が変化した場合
「濃度が変化する」とは、
反応に使用した物質の濃度を濃くしたり薄くしたりするということです。濃度を濃くするには物質の質量を増やせばOKですし、濃度を薄くするには質量を減らせば良いわけです。
次の反応で考えてみましょう。
この反応は現在化学平衡の状態にある、図のように天秤でバランスが保たれていると考えてください。
この反応において、例えばH2を加えてH2の濃度を上げてみます。
すると、保たれていたバランスがくずれ天秤は左に傾きます。(H2を重くしましたからね。)
この傾きを戻そうとするために、天秤の右側に力が働きます。
「重くする」というのはあくまでも例えですが、
天秤のバランスを保つために右に力がかかる、すなわち化学平衡が右に移動すると考えましょう。
では別の条件で考えてみましょう。
この反応において、HIの濃度を下げたら平衡はどちらに移動するでしょうか?
2HIの濃度が下がるということは先ほどの天秤で言うと、HIの重さが軽くなり左に傾きます。この傾向を補正するために天秤の右側に力が加わります。すなわち、平衡は右に移動するとなるわけですね。
いかがでしたか?濃度の場合、このように天秤をイメージして考えるとわかりやすいと思います。
次回は
温度が変化したときに平衡はどう移動するのかを説明していきます。