青年期とは
人間誰しも通過する
青年期という期間があります。
人は人生の周期である
ライフサイクルの中で、幾つかの特徴的な期間を過ごします。
アメリカの発達心理学者
エリクソンによれば、ライフサイクルは次の8つの段階に分かれるとされています。
■乳児期
■幼児期
■幼児期初期
■学童期
■青年期
■成人期初期
■成人期後期
■老年期
(エリクソン)
この分類から、青年期は、子供から大人へ変わる非常に重要な期間であることがわかります。
重要な期間であると同時に、青年期は不安定でさまざまな課題を抱える時期でもあります。
エリクソンは青年期を
モラトリアム期間ととらえ、ドイツの心理学者
レヴィンは、
マージナルマン(境界人)と定義しました。
(レヴィン)
モラトリアムとは猶予期間、つまり、大人が負うべき義務や責任を一定期間猶予され、試行錯誤できる時期だということです。一方のマージナルマンは、青年が子供の集団としても、大人の集団としても所属したくないという思いが現れ、境界人として不安定な時期であることを説明したものです。
青年期の発達課題
このように、人生における大切な時期である一方、同時に不安定な時期でもある青年期は、様々な発達課題があります。
アメリカの教育学者
ハヴィガーストは、青年期における発達課題を以下のように定義しました。
・同年齢の男女両性との洗練された新しい関係 |
・自己の身体構造を理解し、男性(女性)としての役割を理解 |
・両親や他の大人からの情緒的独立 |
・経済的独立に関する自信の確立 |
・職業の選択および準備 |
・結婚と家庭生活の準備 |
・市民的資質に必要な知的技能と観念を発達させる(法律、政治機構、経済学、地理学、人間性、あるいは社会制度などの知識、民主主義の問題を処理するために必要な原語と合理的思考の発達) |
・社会的に責任ある行動を求め、かつ成し遂げること |
・行動の指針としての価値や理論の体系の学習、適切な科学的世界像と調和した良心的価値の確立(実現しうる価値体系をつくる。自己の世界観をもち、他人と調和しつつ自分の価値体系を守る。) |
この他に、先ほどのエリクソンは、青年期の発達課題を
アイデンティティ(自我同一性)の確立としました。
アイデンティティとは、人生における自分の「核」となる自我のことです。
アイデンティティの確立には、自分自身の特徴を把握し、自分自身で生きているという内面的な側面(個性化)と、社会の一員として他者と強調し生きる社会的な側面(社会化)の2つが必要です。この2つをうまく調和させ、精神的・心理的に自立することが青年期の大きな課題なのです。
自我の目覚め
青年期は、男女ともに性的な身体の特徴が現れる第2次性徴と、自分自身の自我の目覚めという心理的変化が現れます。
身体の変化は男らしさ、女らしさの根源になり、自我の目覚めは親から自立し、自分自身の判断で行動しようとする現象です。
例えば、親や教師などに反抗する、既存の権力に反感を覚えるなどの第2反抗期があります。
これら、青年期における自我の目覚めを、フランスの思想家ルソーは著書『エミール』の中で、第二の誕生と表現しました。
第二の誕生により人間は自分自身の人生に目覚め、同時に傷つきやすい心の動揺の時期を迎えます。
この青年期に、劣等感、孤独感、不安感やさまざまな悩みを抱えながら、それらを克服する過程の中で、優れた人間性を育んでいきます。