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同害復讐法とは 世界史用語112 |
著作名:
ピアソラ
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同害復讐法
ハンムラビ法典とは、紀元前18世紀頃にバビロニアの王ハンムラビが制定した法典です。この法典は、世界最古の成文法の一つとされ、後世のオリエントの法に大きな影響を与えました。特に注目されるのが、同害復讐法と呼ばれる原則です。この法律は、「目には目を、歯には歯を」というように、被害者が加害者に同じ損害を与えることが許されるというものです。この原則は、ハンムラビ法典の第196条から第200条にかけて具体的に規定されています。例えば、第196条では、「もし人が他人の目を潰したならば、その人の目を潰せ」と定められています。同様に、第197条では、「もし人が他人の骨を折ったならば、その人の骨を折れ」とされています。
同害復讐法の目的は、何かと何かというものの間に均衡を保つことです。この法律は、過度な復讐を防ぐとともに、被害者に正義を与えるという意図があったと考えられます。同害復讐法は、古代のシュメールやアッカドの慣習法に由来し、ハンムラビ法典はそれらを集成したものです。また、同害復讐法は、ユダヤ教やキリスト教の聖書にも引用されています。例えば、旧約聖書の出エジプト記21章23節から25節では、「もし人が妊婦を打って、その子を流産させたならば、その人は、その妊婦の夫が求めるとおりに、生命には生命を、目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足を、火傷には火傷を、傷には傷を、打撲には打撲を与えよ」と記されています。
しかしながら、同害復讐法には、いくつかの制限や例外も存在しました。まず、同害復讐法は、同じ身分の者同士にのみ適用されました。ハンムラビ法典は、貴族、平民、奴隷の3つの身分を厳密に区別し、それぞれに異なる刑罰を定めました。例えば、第198条では、「もし人が貴族の目を潰したならば、その人の目を潰せ。もし人が平民の目を潰したならば、一マナの銀を支払え。もし人が奴隷の目を潰したならば、半分の価値を支払え」と規定されています。同様に、第230条では、「もし建築家が家を建てて、その家が崩れて住人を殺したならば、その建築家を殺せ。もし住人の息子を殺したならば、その建築家の息子を殺せ」とされています。
さらに、同害復讐法は、被害者や加害者の意思によって変更されることもありました。ハンムラビ法典は、契約自由の原則も認めており、被害者は加害者に対して金銭や物品などの代償を受け取ることで、同害復讐を放棄することができました。例えば、第209条では、「もし人が他人の娘を打って、その娘を流産させたならば、その人は十シェケルの銀をその娘の父に支払え。もしその娘が死んだならば、その人は二十シェケルの銀を支払え」と規定されています。また、加害者は被害者に対して和解や謝罪を求めることで、同害復讐を軽減することができました。例えば、第206条では、「もし人が他人の歯を折ったならば、その人は一マナの銀を支払え。もし被害者が和解を求めたならば、その人は半分の価値を支払え」と規定されています。
以上のように、ハンムラビ法典の同害復讐法は、古代オリエントの社会において、犯罪と刑罰の関係を規定する重要な法律でした。同害復讐法は、過度な復讐を防ぎ、被害者に正義を与えるという目的を持っていましたが、同時に、身分や意思によって変化する特徴もあったといえます。
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